近頃、自転車保険の加入を義務づける自治体が増えています。10代のみなさんは、日々の生活の中で自転車の交通安全についてちゃんと考えたことはありますか?
NEONAVI編集部は中高生のみなさんのために、自転車保険と交通安全をわかりやすく解説しなければと思い、元全日本交通安全協会事務局長・長嶋良氏にお話を聞いてきました。長嶋さんは幼少時に交通事故で家族を失った経験から、人生をかけて交通安全に取り組んできた自転車保険の第一人者です。
簡単に略歴を紹介しますと、大学卒業後に警察官として交番勤務からスタートした後、警察庁に転身し、刑事部門や交通部門を経て、佐賀県の警察本部長に就任。警察庁退職後は一般財団法人全日本交通安全協会の事務局長を務めました。そんな長嶋さんなら、 交通安全のことはなんでも答えてくれるはず!そう思い、取材させていただきました。
誰よりも交通事故に詳しい長嶋氏が語る、これだけは知っておいて欲しいこととは?
(NEONAVI編集部、以下略)現在、多くの自治体で自転車保険が義務付けられるようになりました。その背景には、自転車事故の多発があります。それこそ中学生や高校生が相手をケガさせた、死亡事故を起こしてしまったということもあります。
(長嶋・元県警察本部長、以下略)自転車に乗るのに免許はいりません。でも、自転車は「車両」なんです。だから道路の左側を走るんですよ。
車と同じく事故を起こすと刑事・民事・行政・そして社会的責任を負うことになります。子供でも同じです。責任が追及され、刑事罰を受けたり、損害賠償もしなければならないことも・・・。
ーー私、以前警察に怒られたことがあるんです。横断歩道を渡る時に青信号が点滅していたんですよ、自転車を飛ばして渡ったんですけど最後赤信号になってしまって。その時に警察の人に「免許の点数引くぞ」と。「あぁ、自転車って車両なんだ」って改めて反省しました。
はい。高校生でも、運転免許を持っている人がいるとすれば、注意が必要です。大人もそうですけど、自転車事故で相手を死亡させたりなんかしたときに、明確な違反があれば、運転免許の仮停止という行政処分の対象になることもあるからです。
自転車事故を起こせば社会的責任というのも出てきます。その社会的責任の中には、学生だと停学や退学という処分も入りますよね。事故で被害者も加害者も人生が変わってしまうんです。
ーー中学生や高校生でも社会的責任を負うわけですね。
大別して4つの責任があります。刑事、民事、行政、社会的責任です。
子どもたちはなかなか行政と言われても「行政処分受けるわけじゃないしなー」と思っちゃうかもしれませんけど、社会的責任はそれを許してくれません。
例えばですけど、ご近所の人を自転車で轢いて死亡させたり、介護状態にしてしまったならば、その地域に住んでいられなくなることも・・・。お父さんお母さんもその地域に住んでいられなくなる。それはもう社会的責任の一つとも言えますよね。
また、民事責任で言えば、相手方に対する損害賠償ですが、高額で払いきれないかもしれません。実際に1億円近い賠償を若年層の自転車事故で負うことがあるんです。
「しっかりルールを守りましょうね」という言葉の重みがわかると思います。
ーー万が一交通事故が起こった際には、自転車保険が非常に有用だと思います。
そうですね。数年前、小学生が加害者になった自転車事故で、裁判所から1億円近い損害賠償の支払い命令を受けるという事案がありました。
自転車保険などの損害賠償保険に加入していないと、支払うことはできませんね。結果として、加害者やその家族も、通常の生活ができなくなったりして大変な思いをすることになります。
自転車保険は20年ほど前からあったのですが、自転車が加害者になるという認識があまりなく、普及しなかったんです。でも、裁判で、自転車側に高額な賠償命令が出るようになって、過去には「交通弱者」であった自転車も「加害者になる」という意識に変わってきたようです。
ーー一回の事故で簡単に人生が変わってしまう…
交通事故は、自転車であっても歩行者であっても、万が一加害者になって、相手方に対して怪我をさせたり死亡させるようなことがあると、刑事罰を受けたり民法上の損害賠償請求を受けることになるんです。損害賠償はお金で支払うことと決まっています。
だから、私は「自転車保険に加入しましょう」と加入を促進しています。
自転車保険は、被害者を救済してあげるのはもちろんなんですけど、加害者や加害者の家族の金銭的・経済的、そして精神的な負担を和らげるためにも大事なものなんです。
ーー実際に交通安全について子供たちが学ぶには、どうしたらよいのでしょうか?
「交通安全は家庭から」という言葉が、昔から言われているのはご存じでしょうか?私はそこに答えがあると思っています。
学校の先生だけに任せるんじゃなくて、家庭・学校・地域・職場。こういったところが一体となって、またそれぞれの立場で交通ルールやマナーを指導し、取り組んでいく。そこではじめて交通安全意識が高まるんじゃないでしょうか。