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この夏、観たい恋愛映画3選【映画のすゝめ】

夏になると、恋愛映画が観たくなる。

煎り付くような初夏の日差し、少し長くなった夕暮れ、夜風に混じる湿った空気。気だるい季節を前にふっと吹き抜ける風は、忘れられない人や遠い日の記憶までも運んでくれるようだ。そんな夏に無性に帰りたくなって、気づけば再生ボタンを押してしまう作品がある。

今回紹介するのは、この夏にぜひ観てほしい3本の恋愛映画。

運命のいたずらに翻弄される夫婦、過去の恋を静かに見つめ直す男女、そしてモラトリアムを生き急ぐ若者たち。同じ季節のもとで繰り広げられる異なる会話劇に、胸の鼓動が高鳴る。暑い日々の中だからこそ、その魅力が鮮やかに浮かび上がる大人の恋愛映画を、今年の夏に味わってみてほしい。

 

『1ST KISS』

出典:filmarks公式サイト(https://filmarks.com/movies/118093

ありふれた日常の中で交わされる会話こそが、なによりもかけがえのないものなのかもしれない。

そんなことに気づくのは、いつだって大切なものを失った後だ。

主人公のカンナもまた、その尊さに気づけないまま夫・駈を交通事故で突然亡くし、深い悲しみに暮れていた。空気のような存在になっていた相手でも、いるのといないのとではまるで違う。

仲直りもできず、約束も果たせないまま大切な人を失ったとしたら、他に何ができようか。

後悔は容赦なく自分を襲ってくる。

もう会えない夫に想いを馳せながら過ごしていたそんなある日、カンナはひょんなことからタイムトラベルを果たしてしまう。彼女が帰ってきた場所は、駈と出会った運命的な一日。

再び時間をともにするなかで、カンナはもう一度駈に恋をする。そして、彼に訪れる最悪の未来を変えようと奔走することを決意する。

果たしてカンナは、タイムトラベルの運命に抗い、愛する人を救うことができるのか。

 

この映画のここが凄い!

本作の魅力は、恋愛映画とSF映画という珍しい組み合わせを違和感なく融合させているところです。脚本を手がけるのは、『カルテット』や『花束みたいな恋をした』で知られる坂元裕二さん。タイムトラベルという大胆な設定を取りながら、物語の核となるのは日常の何気ない会話。人と人との関係は、劇的な出来事ではなく、こうした小さなやり取りの積み重ねによって形作られていくのです。本作は、その当たり前でいて見落としがちな断片の価値を改めて思い出させてくれます。

なかでも印象的なのが、作中に登場するプロポーズのシーン。こんな言葉の伝え方があったのかと思わず唸らされるほど新鮮で、坂元裕二作品ならではの台詞の魅力を存分に味わうことができます。

 

『ちょっと思い出しただけ』

出典:filmarks公式サイト(https://filmarks.com/movies/98991

思い出はいたるところに転がっている。

二人で過ごした部屋、酔った足取りで歩いたアーケード、何気なく腰掛けたあの公園のベンチ。

大きなくぼみを残して去っていったあの人の片鱗は、今も生活の節々に息づいている。そんな過去のセンチメンタルに浸る日があっても、悪くはないだろう。

『ちょっと思い出しただけ』は、過ぎ去ってしまった二人の記憶の断片を、必死に拾い集めていく作品だ。

必死でなければならないのは何故か。それは、時間があまりにも残酷だからである。

過ぎゆく時の流れに身を任せているだけでは、あんなに特別だった日々でさえ、気づけば遠く、見えなくなってしまう。

本作は、7月26日という一日を軸に、コロナ禍以前から続く6年間の恋の軌跡を描く。

一年前の悲しかったことなんて、今となればどうでも良く思えてしまうものがほとんど。しかし、どれだけ年月が経っても消えない記憶も、確かに存在する。

ずっと覚えているわけではなくても、何気ない会話や街の風景、ほのかな季節の香りによって、不意に呼び起こされることがある。

無常に進み続ける時間の中で、それでも思い出してしまう瞬間があるのは、その記憶が確かに自分の一部となって今も脈打っている証なのかもしれない。そんな過去をちょっとだけ思い出してみることは、同時に未来を拓く一つの方法でもあるように思える。

 

この映画のここが凄い!

本作の魅力は、音楽と映像の見事な融合にあります。作中では、ウィノナ・ライダー主演の映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』が重要なモチーフとして登場しますが、本作の主題歌もまた、クリープハイプが書き下ろした楽曲「ナイトオンザプラネット」が採用されています。夜ゆえの感情の揺らぎやあの頃の懐かしさを想起させる楽曲は、物語と美しく共鳴しています。

さらに、劇中のライブシーンではクリープハイプ本人が出演し、演奏を披露します。そこで鳴らされる楽曲の数々もまた、登場人物たちの感情を語っているようで、見どころの一つです。

 

『明け方の若者たち』

出典:filmarks公式サイト(https://filmarks.com/movies/95640

大学時代はしばしば、「人生の夏休み」と称される。それでは、大学を卒業し、社会の歯車の一員となった人々は、その後一生、夏休みの来ない時間を生きていかなければならないというのか。そんな夢のない話があっていいのか。

本作が描くのは、そんな風に大人になることに怯えながらも前へ進もうとする青い若者たちの姿だ。人生におけるマジックアワーとも呼べる、あの曖昧で不確かな時間。その中で彼らは酒を酌み交わし、恋をして、将来の不安を語り合う。

怠惰な日々を無為に過ごしているように見えても、結局その時間はどこまでも眩しい。終わる気配のない希望の光に包まれながらも、彼らは確実に、ゆっくりと大人になっていく。

そんな中、無力感や苛立ち、行き場のなさを埋めるようにして始まる恋は、果たして救済と言えるのか、それとも単なる逃避なのか。そしてその逃避行が終わりを迎え、否応なく現実へ引き戻されたとき、人は何を失い、何を手にするのか。若者たちの揺らぎを痛いほど瑞々しく映し出した本作からは、何度も反芻せざるを得ない破壊の美しさが垣間見える。

 

この映画のここが凄い!

本作は、カツセマサヒコさんによる同名小説が原作です。発売当初からAmazon日本文学ランキングで1位を獲得するなど、ヤングアダルトな雰囲気で若者を中心に注目を集めた作品です。

劇場版ならではの魅力は、劇中歌のセレクトにあります。KIRINJIの「エイリアンズ」やきのこ帝国の「東京」をはじめ、平成を想起させる楽曲たちが随所で使用されています。等身大の心情や切なさを象徴する楽曲たちが流れることで、登場人物たちの解像度がぐんと上がります。

さらに、本作には配信限定のスピンオフ作品『ある夜、彼女は明け方を想う』も存在します。映画の世界観をさらに味わいたい人は、ぜひ併せて観てみてください。

 

おわりに

ひと夏の恋でも、長く続く旅路のほんの一小節にすぎない恋でも、夏は平等に人々を照らし出す。どこかに本当に存在するかもしれない、ありふれた男女を描いた三つの物語は、私たちが忘れかけていた感情や記憶をそっと掬い上げるだろう。

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