車両等の運転者には、負傷者の救護義務と交通事故の報告義務があり、車の運転者はもちろん、自転車運転者にも報告義務があることは前回記載しましたね。
今回は、自転車運転中に車と接触する事故に遭遇したとき、例えば被害者的(第二当事者)な立場になった場合にも“警察に報告してね”という話です。
「大丈夫だから」と思わないで
自動車と自転車の接触事故のときに、自転車運転者が自動車のドライバーに対して「大丈夫ですから・・・」と言って立ち去ってしまうという例があります。
事故発生直後は、少しの打撲や擦り傷程度のケガだった場合、「事故っちゃった~」、「ちょっと痛いけど、大丈夫だろう」、「学校に遅れそう」、「自分も不注意だったから…」などの理由で現場を立ち去ってしまうんですね。
でも、ちょっと待ってください!
学校に行ったあとに痛みが出てきたり、翌日痛みがひどくなったり・・・後日病院で診察を受けたら、骨折していたということもあります。
軽傷だと思っていたが、命にかかわる怪我をしていたケース
過去に自転車に乗った学生が、車とぶつかった事案で、以下のようなことがありました。
自転車の学生は事故直後、軽い打撲程度で頭がちょっと痛い程度だったため、大事には至らないと思い、事故にあったことを親にも内緒にしていました。しかし翌朝起きてみると頭痛がひどく、熱も出てきて、徐々に意識が薄れて行く感じがしたので、家族に事故のことを話したそうです。
心配した家族が救急車を呼び、病院で精密検査を受けると・・・
頭の中が出血(硬膜下出血)していることがわかり、緊急手術をして一命を取りとめました。
この自転車を運転者していた学生は、事故現場で相手の車の運転者に「大丈夫です」といって、その場を立ち去ってしまい、車の運転者の名前や車のナンバーも確認していなかったのです。
もし、このまま相手がわからなかったり、万が一意識不明になったり、亡くなってしまったら…、そう考えただけでも“ぞ~”としますよね。ご家族にも大変悲しい思いをさせてしまうことになります。
この事案では幸いにも、自転車が立ち去ったあとでしたが、車のドライバーが自ら警察に連絡していました。届けを受けた警察では、自転車運転者不明として交通事故の捜査中でしたので、すぐに相手のドライバーが特定できました。
でも中には、相手方が分かっていても、時間が経過すると「自転車が突っ込んできたので私は悪くない。」、「大丈夫だといったじゃないか!」などと言い出し、話がまとまらないことがあります。
報告しないことのリスク
事故直後すみやかに運転者の氏名等の確認や警察への届出をしないで立ち去ると、以下のようなリスクが発生します。
○ 損害賠償を受けられない場合がある
- 後日痛みが出たり、ケガの程度が大きくなった場合などに相手が分からない。
- 相手から「当時は大丈夫だと言ったでしょう」と補償を拒否されることがある。
○ 事故発生の状況がわかりにくくなる
- 事故現場の状況、証拠資料、目撃者などの証拠が集めにくい。
○ 交通事故証明書の発行がされない
- 保険請求等に必要な「交通事故証明書」が発行されないことがある。
このようなリスクを避けるためにも、警察に報告するのは重要なことですね。
万が一の事故のときは
事故が発生したとき、警察への報告義務の対象になる「車両等の運転者」には、自転車も含まれますし、加害者・被害者の区別はありません。
ケガがない場合や軽度のケガの場合などで、相手の運転者が警察に報告しないときは、自転車の運転者が警察に報告しましょう。
また、両親など保護者の方にもできるだけ早く連絡をとって、必要な対応がとれるようにしましょう。
お互いに話ができる場合には、相手方の住所や名前、連絡先、相手の車のナンバーなどを確認しメモしておくようにしましょう。
交通事故は、いつ、どこで起こるかわかりません。
自転車を運転する人は、加害者的な立場になったときはもちろんですが、被害者的な立場になったときでも、現場から立ち去らず、110番などの方法で警察官に連絡することで、自分に降りかかるリスクを小さくすることができます。
自分のケガにも対応した保険に加入を
自動車と接触したような場合には、通常は相手方の自動車損害賠償保険や任意の自動車保険で治療代等が支払われます。
しかし、警察に報告せず事故現場で別れてしまい、相手の情報等が分からない場合などには、補償が受けられないことがあります。
そのようなことも考え、自転車利用者の皆さんも、対人賠償補償はもちろんですが、自分のケガなどに対応した自転車保険や傷害保険などに加入し、万が一の時に入院や通院、手術などの保険給付金を受けることができるようにしておくとよいですね。
自転車を運転するあなた自身を守るため、家族に迷惑をかけないためにも、自転車事故の際には必ず警察に届出をしましょう。