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若い世代と政治の話|埼玉県議会議員・田村琢実先生インタビュー③

若い世代が選挙に行かない、若者が政治に関心を持てないことはよく耳にします。では、現役の政治家はどう考えているのでしょうか?

埼玉県議会議員 田村たくみ先生のインタビュー最終回です。

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若者が政治に関心がない理由

―― (NEONAVI編集部、以下略)若者たちが選挙に行かないことが問題視されています。政治家の観点から、若い世代の投票率が低いことの理由を教えていただけますか?

(田村先生、以下略)選挙権を持っているとして、ご本人が自分の生活環境で課題、問題点を感じていなかったら「選挙に行こう」と思いませんよね?生活に不便を感じていないんですから。

――確かにそうですね。それでも「選挙は行かなきゃいけないものだ」と言われています。

それは、民主主義の社会の中で「社会情勢が熟成する中で勝ち取った権利」だからですね。でも、社会情勢が熟成されたことで課題や問題を感じなくなったとしたら、選挙に行かないという選択肢が出てきますよね。

――若者はいまの世の中に不満を感じていない?

今の若者が恵まれているのは間違いがありません。投票率でいえば、埼玉県議会議員選挙では投票率約38%です。反対に言いますと、62%の人は関心がないか、政治や生活に不満がないということになります。

――確かに日本の若者は恵まれています。それとは別で、若者たちは日々の暮らしの中で、「もっとこういうことがあったらいいのに」と不満があっても選挙に行っていないのではないかとも思います。

はい。その課題感が選挙と結びついていないのだと思います。

それでも、我々はそういう人たちの小さな声を拾って集めて、政策に反映していくのが仕事だと思っています。

――誰がどんな政策を行うかがわからない、という人も多いのではないかと思います。だから、誰に投票すればいいかわからない、自分が投票してもそれがどう反映されているのかわからないと感じてしまう。

日本社会の中の投票行為で多くを占めているのは、「知っているか、知っていないか」、または「頼まれたか、頼まれていないか」です。つまり、政策で選んでいる投票行為が少ないのです。

実際、私を支援されている方でも、私が何を政策として訴えているか、1から100まではわからないと思います。

――それなら、どうやって投票する人を選べばよいのでしょうか?

民主主義の社会では、この選び方が正しい、という正解はないと思います。

投票に関して言えば、例えばポスターで選んだっていいんです。もちろん、一生懸命政策を勉強して、自分の価値観などに合った人を見つけて応援する。どれも同じ一票です。

――いろんな選び方があって、母数が増えればいいのかもしれないですね。

言いづらいのですが、私は無理にでも選挙の母数を増やす必要はないと思っています。選挙に行かない人たちは白紙委任をしてますので、政治や生活に不満がないと言えますよね?

母数を増やすためだけなら、マイナンバーで投票できるようにするとか、選挙に行かない人は消費税率をあげればよいのです。

――そうすれば絶対行きますね。笑

県庁はなにをするところ?

次に県庁について教えてください。国の機関、県庁/都庁、市役所/区役所とありますが、市役所/区役所はみんなにとって身近な印象があります。住民票を取るなど、手続きをしに行くことが多いからですね。でも、県庁/都庁と聞くとなんだか遠い存在に感じますし、国の機関というとさらに想像もつきません。だから、利用方法がわからなかったり、そもそも私たちの暮らしにどう関係するのかわかりません。

県庁にいけば誰でも何でも相談に乗りますよ、と言うサービスは残念ながらありません。ただ、我々政治家はその反対です。国会議員の先生方も、県議会議員、市議会議員もそうですが、有権者の方の要望や陳情は、地域のことから個人的なことまで様々な相談が寄せられます。

その中で市のことだったら市に振りますし、国のことだったら国会議員に頼みます。何でもご相談いただければ対応します。それが政治家の役割の1つだと思います。

政治家の仕事、国と県庁の関係とは?

――そうなんですね。そういった草の根の活動に対して、政治家のメインの仕事は「議会」だと思うのですが、どのような役割があるのでしょうか?

国、都道府県、市町村では、法律に則った扱う事務の違いがあります。

例えば、新型コロナウィルス感染症対策は中央集権(法定受託事務)でやっています。つまり、国の決めたことに対して、地方が従う形です。緊急事態宣言は国が発令するのですが、要請は都道府県が行います。まん延防止等措置も、地方が国に要請します。

地方が国に要請を行い、国が決定を致します。その後、基本的対処方針というものが出ます。地方はそれに従います。その時に初めて具体的な対応(例えば、7時以降のお酒の提供を禁止するなど)が発表されます。それは全て国が決めていました。(現在、見直しが行われ、一部知事の判断で決定できるものもあります。)

新型コロナウイルス感染症対策に関し、東京都ですと予算が伴うにも関わらず、知事が議会を通さないで専決処分として独断で決めています。しかし、埼玉県では専決処分を極力行わずに、議会での審議を通して決めてます。議会制民主主義の根幹に関わる問題だと感じています。

――議会を通さなくてもいいとは驚きです。東京都の対応は大丈夫なのでしょうか?

何百億、何千億円という予算を、知事が専決処分で議会も通さないで決めるのは、個人的には良くないと思っています。

外野は「どうせ可決するんでしょう?」というのですが、予算は中身を見なくてはいけません。

――中身を見てもし納得できなかったら?

納得できないこともあります。それでも迅速な対応を求められる状況ですとOKを出さなくてはいけない。そこで、予算執行に対し意見を添えることもありますし、執行状況等を監視することが議会の役割として重要となります。

――地方分権が何十年も騒がれています。どのような地方の政治ができればよいのでしょうか?

例えば、国から「埼玉県は1000億円で新型コロナウィルス対策をしてください」と言われれば、我々はそれで対応ができます。しかし、現実は直前になるまで、お金もやることも決まらないで、ある日突然国の決定が行われる状態です。それでは現場はてんやわんやになりますよね。

――繰り返すようですが、基本的には、国があってその下に県庁だったり、市役所だったりがあるということですよね。

そういうわけでもないんです。

2000年の地方分権一括法により、上下関係は法律上無くなりました。しかし、実際の事務運用では予算を持っている国の従属状況は変わらないと感じます。この予算をひも付きではなく、自由に使用できるものとして地方に配分できるようにして頂きたいところです。

――実際、議会で先生が意識していることはどんなことでしょうか?

議会の権能(主体性)の強化です。民主的な議決権を有する議会の能動的な活性化が重要と考えます。また、最近では何度か口にしておりますが、「多様性と寛容性」です。「ダイバーシティアンドインクルージョン」が重要と考えます。

そうした部分が一部の古い政治家に足りないケースがあります。ご自身の価値観で決めつけちゃう。「LGBTなんて嫌いなんだよ、嫌なんだよ」で議論が終わっちゃう状況です。

嫌いかどうか個人的なことではなく、認めてあげようという話なのにです。そのような態度が、若者たちに政治が意味のないものに感じられてしまう要因になっているとも思います。

――今後はどういったことを目指していきたいですか?

埼玉県は若い仲間たちの力もあって、全国的に見ても改革が進んでいます。私は「誰一人取り残さない社会」とよく言うのですが、そういう世界を埼玉県から作っていきたいですね。

――先生は国にも他の政治家にもはさまれて中間管理職のように思えてきました。

もうバチバチ喧嘩しています(笑)。

――ありがとうございました。先生らしい熱い政治活動を楽しみにしております。

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