2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18歳になると、本人の意思によって各種契約を行うことができるようになりましたね(過去記事⇒https://neonavi.info/2555/)。しかし、そのことにより契約などのトラブルが増加しています。
最近の契約トラブルについて紹介しますので、今後予想されるトラブルへの対処法を学び、巻き込まれないようにしてくださいね。
取り消しができない!
“えっ、それってどういうこと”と思った方もいるかもしれませんね。
成年年齢が引き下げられ、18歳以上の人は親など保護者の同意がなくても、自分の意思によって携帯電話の購入やクレジットカード加入、ローン契約など各種契約行為が自由にできるようになりましたよね(資料参考)。
でもその一方で、未成年者のときとは異なり契約が一旦成立すると取り消しができなくなりました。まずそのことを理解しましょう。
民法の「未成年者取消権」
民法(第5条第2項)には「未成年者取消権」という規定があります。
これは未成年が法定代理人(親など)の承諾なしに契約を結んだ場合には“一方的に契約を取り消すことができる”というものです。
いうまでもなく取消権の適用対象となるのは「未成年者」ですね。成年年齢が18歳に引き下げられたことで、適用対象となる未成年は18歳未満。
18歳以上の成年年齢に達した者が結んだ契約は有効なものであり、「未成年者取消権」では取り消せないのです。
18歳、19歳が悪徳業者のターゲットに!
国民生活センターが発表している消費者相談件数をみると、2020年度までの5年間に全国の消費生活センターなどに寄せられた相談のうち、契約者が18歳または19歳だったケースは、あわせて4万8000件余り、20歳から24歳の20代前半が契約者だった相談件数はおよそ20万3000件と、約5倍も成年年齢に達したばかりの年齢層が多かったのです。
このデータが示すように、これまでは成年年齢に達して間がない20~24歳の相談件数の方が多く、単に若い人というよりも“未成年者取消権がなくなる20歳を過ぎた”の年代が悪徳業者に目を付けられていたといわれていました。
ところが2022年4月に成年年齢が引き下げられた後は、成年年齢に達して間がない18歳や19歳の相談が急増しました。そのことは、成年年齢に達して間がない、どちらかというと社会経験や経済的な知識があまりない人たちが悪徳業者のターゲットにされる傾向になっているともいえます。
18歳、19歳はどのような相談が多い?
国民生活センターの資料によると、2022年4月~10月末までの主な相談としては、脱毛エステ関係が最も多く、次いで出会い系サイト・アプリ、商品一般、他の内職・副業、賃貸アパート、アダルト情報などが多かったです。
なかには、大学入学後の学生が「友達からマルチ取引の勧誘を受けた」、「副業や投資として高額な商材を買わされそうになった」、「低価格で1回限りの購入だと思って申し込んだが、実際は定期購入契約で支払総額は高額、しかも途中解約ができない」などの相談事例もありました。
また、ネットショッピングによるトラブルも多発傾向にあります。
ネットで相手の顔を見ないで買い物をすることに慣れている世代なので、SNSの広告に掲載されている商品を気軽に買ってしまいがちなのかもしれませんね。
この種サイトの中には、住所も電話番号も書かれておらずキャンセルしようにも連絡がつかない、ブランドメーカを装った偽サイトに誘い込まれたという例や、ネットオークション・フリマアプリでの取引に関するトラブル相談もあったようです。
相手の手口を知ろう!
ちなみに最も多い脱毛エステに関する相談では女性が多いですが、2020年度からは男性の相談が増加しているようです。男性もひげや全身脱毛などをするようになってきたためです。
男女にかかわらず「きれいになれる」、「お試し価格で」などの甘い話には大きなリスクがあります。セールスや事業者の説明をうのみにせず、その場で契約しないようにすることです。
そのほか、最近の悪徳事業者の手口としては
- いいことだけしか言わない
- なかなか断れない雰囲気を作り出す
- 期間限定や契約枠があるので「すぐに契約しないとなくなる」などと契約を急がせる
- 大幅な値引き売りにする(最初から高額料金を示す)
- 広告では「お試し施術」「月額○○○円」など安価なものを示す
- 広告掲載の安価なコースや施術ではなく、高額なプランを勧める
- 「無料体験だけでも・・」といって引き込み、体験後に契約をせまる
- クレジット契約の場合に必要な手数料を説明しない
- 長期間または定期コースの契約の割安感を強調する(解約違約金などを説明しない)
※1回あたりの単価は安価のように見えるが長期や定期購入では解約時の違約金が高額
トラブルに巻き込まれないためにはどう対応したらいいの?
① キャッチセールス等に関わらない
無店舗販売やキャッチセールスのような人や事業者には“関わらない、ついていかない”ことです。
② その場では契約しない
契約(購入)をする前に、「本当に必要な商品・契約なのか」を冷静に検討しましょう。
もし路上や喫茶店などで説明を受けた場合であっても、“その場で契約はしない”ことが鉄則です。
一旦その場を離れて、冷静に考えると、無駄な契約をしたのかと思うことが多く、また、契約を取消す場合には高額な違約金を要求されるなどの大きなリスクを負うことになります。
③ はっきり断る
はっきりと“断る”ことが大事。
興味ありそうなそぶりや曖昧な態度は禁物。業者は「脈がある」、「いま一押しだ」とさらに甘言等を用いて強引に契約に持ち込もうとします。
はっきり断って、
- 人影のないところには行かない、できるだけ早くその場を離脱する
- 契約を迫られてもその場でサインをしない
※自己意思で契約はできるが、学生や就業していても支援を受けていることを理由に、家人にも確認したい旨を申し伝える
などで対処しましょう。
④ 周りに助けを求める
それでもしつこくつきまとう業者等もいるので、もし離脱できない、断っても付いてくるような場合には、大声を出すなどして周りの人に助けを求めましょう。恥ずかしいことではないです。
⑤ 特定商取引法(クーリング・オフ制度)等を活用する
断れず契約してしまった場合でも、特定商取引法のクーリング・オフ制度や消費者契約法を活用して解約等をすることができる場合があります。
特定商取引法(クーリング・オフ制度)
いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるように、法律で決められた契約書面を受け取ってから8日間(マルチ取引は20日間)内であれば、無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です。
※2022年6月より、書面によるほか、電磁的記録でもクーリング・オフの通知を行うことが可能になった。電子メール、USBメモリ等の記録媒体や事業者が自社のウェブサイトに設けるクーリング・オフ専用フォーム等により解約通知を行うことができ、FAXも可能。
契約書面を受け取っていない場合は、期限なく解約が可能。
クーリング・オフ https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html
消費者取引法
契約する際に事業者の不当な勧誘によって消費者が誤認・困惑等して契約を締結した場合に取り消しができるとされています。
具体的には契約に当たり「うそを言われて契約した」「帰りたいと言ったのに帰してくれずに契約した」などの場合には、消費者契約法に基づき、あとから取り消すことができるので、そのときの状況などをしっかり記録しておくようにしましょう。
消費者ホットライン「188」に相談を!
契約をしたものの不審に思ったり、トラブルにあったと感じたら、消費者ホットライン「188」に電話して相談しましょう。
「188」をコールするとは最寄りの消費生活センターの相談窓口につながるので、必要なアドバイスを受けましょう。
消費者ホットライン | 消費者庁 - www.caa.go.jp |
家族で注意喚起を!
保護者の方や未成年者も含めて、家庭内で契約やお金のトラブルに関する話合いや注意喚起、情報共有すると良いですね。
例えば、「ニュースでこんなことをやっていた」とか、「そういえば、友達からこんな話を聞いた」など、適宜の機会をとらえて話題にして話し合ってみましょう。
その際、「まずは不審な人やあぶない話には関わらない、ついていかない」ということを基本姿勢とし、「もし、契約を迫られてもサインしない、いったん持ち帰る、家族に連絡する」ということを家族で共有しましょう。
また、金銭トラブルにあわないためには、「借金をしない」「お金の貸し借りをしない」ということに心がけて、お金の使い方を自分でコントロールできるようにすることも大事なことです。
最後に
これまで説明したように成年年齢の引き下げに伴い、成年年齢に達して間がない年代の契約上のトラブルが増加しています。
成人したことのメリットがある一方で、いろいろなリスクを負うことを理解し、自覚して生活するようにして下さいね。
広告や勧誘の文言をうのみにすることなく、契約条件や内容について契約書面等と付き合わせて納得できるまで説明を受けるなどして、契約は慎重に、また現場ですぐに契約をせずに必要性等を冷静に考えてから本当に必要な契約だけをすることが大切です。
そして、大人には「イヤ」と断る勇気が必要です。