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スウェーデン絵画の魅力!物語性のある絵画との邂逅【スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき】

19世紀後半の西洋美術と聞くと、真っ先に思い浮かぶのはやはりモネやゴッホらをはじめとするフランスの代表的な画家たちでしょう。

一方で、フランスを中心地として栄えてきた西洋美術の潮流は、その周辺の西洋諸国にも多大な影響を与えてきました。とりわけ同時代のスウェーデンには本場フランスで蓄えた知識を故郷に持ち帰り、独自の表現方法を模索し続けた多種多様な画家が数多く存在しました。

本記事は、東京都美術館にて開催された「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展の展覧会レポートです。展覧会では世界的に名の知られた画家からローカルに粛々と活動を続けた画家まで、19世紀後半から20世紀にかけて活躍した画家たちの作品が幅広く取り揃えられていました。

今回は、展覧会の中でも特に目を惹くような「かがやき」を放っていた絵画を通して、現地の伝統や慣習、そして当時の暮らしの在り方に迫ります。

 

光と影が織りなす日常風景の美しさ《モンマルトルの小道》

ヒューゴ・ビリエル《モンマルトルの小道》

フランスの首都パリで最も高い丘であるモンマルトルは、芸術家の街としてもその名を轟かせています。

しかしこの絵画に描かれるのは、華やかなパリのイメージに相反するような閑静な路地裏です。

丘の緩やかな勾配が感じられる小道の左右には高い塀が位置していますが、画面の上部にはひらけた曇り空が広がっています。閉塞感と解放感が同居している画面からは、ひっそりとした居心地の良さが感じられます。

この絵画には主題がはっきりと描かれていませんが、それでも我々が惹きつけられてしまう最大の理由は、塀や木々が地面や向かいの壁に形成する「影」にあります。

日本語には木々が作る影を表す「木漏れ日」という言葉がありますが、これは日本特有の表現であり、英語やフランス語にはこれに代わる言葉がありません。しかしビリエルは、街なかのどこにでも点在するような明暗の対比を見過ごすことなくこの作品に収めました。

作者であるヒューゴ・ビリエルは残念ながら33歳という若さで夭折しますが、独特な着眼点を持つ彼の目に映った美しく新鮮な景色を、私たちは絵画を通して知ることができます。

 

映画のワンシーンのような躍動感《車窓の女性》

アンナ・ノードグレーン《車窓の女性》

車窓から身を乗り出す女性は別れを惜しんでいるようでありながらも、口元には笑顔を浮かばせています。

風になびく真っ白なレースのハンカチや丁寧に一つ編みにされた美しいブロンドの髪がこの女性の高貴さを象徴しています。さらに、画面下部に書かれたファーストクラスの文字は、この女性の社会的地位を暗示させます。

戸外で制作された絵画なのでしょうか。そうでなくても、映画のワンシーンのように一瞬で過ぎ行く情景を画家はいかにして画面に収めたのでしょうか。この作品には、前後の物語を想起させる力強さがあります。

作者のアンナ・ノードグレーンは、パリでの留学経験を経たのちにイギリスで活躍した女性画家です。スウェーデンでは1864年に王立美術アカデミーで女性のためのコースが設立されるなど、女性画家に対する教育の支援が活発に行われてきました。そんな歴史的背景もあり、本展覧会には7名もの女性画家の作品が出品されており、時代を感じさせない多様性の風向きが窺えました。

 

スウェーデンらしい暮らしの象徴《カードゲームの支度》

カール・ラーション《カードゲームの支度》

スウェーデンらしい生活様式をこの一枚で表しきっているような、温もりのある作品です。テーブルライトや食器、果物など、小物が雑多に広がっていながらも、緑と赤のくっきりとしたコントラストによって全体に統一感が表れています。

画面右上では、揺らぐロウソクの炎にあわせて多方面に複数の影が作られていたり、笑顔でこちらの様子を窺うカールの娘たちや奥さんを見たりしていると、今にも画面が動き出しそうです。

ラーションはこのような絵本的な室内画を多数描き上げてきました。日常の中に穏やかな豊かさを見出したラーションの絵画に見られる色彩の暖かさは、今日スウェーデン発祥のインテリアブランドとして知られるIKEAにも通ずるものがあるような気がします。

 

型破りな独創性と新鮮味を武器に《海辺の風景》

アウグスト・ストリンドバリ《海辺の風景》

画面の8割が青色を占めるこの作品は、抽象絵画のような漠然さを持ちながらも鑑賞者に強烈な印象を残します。

空と海の境目は切り込みを入れるように直線で極端に分断されていて、まずはその大胆さに驚かされます。さらに海には分かりやすい遠近法が用いられていないため、この絵画の解釈は題目によってようやく決定づけられているとも言えるでしょう。

崖から海を見下ろしているのでしょうか、人によって解釈が分かれそうなシンプルな構図と色使いが特徴的です。

作者のアウグスト・ストリンドバリはスウェーデンの代表的な劇作家・文筆家として活躍する傍ら、絵画制作にもゆるやかなペースで向き合ってきた画家です。エドゥワルド・ムンクやポール・ゴーギャンらといった今日でも広く知られている画家たちとの交流を持ちながらも、彼自身は正式な美術教育を受けることなく制作に励みました。自由であるがゆえの型破りな独創性や新鮮味を武器に、斬新な目線から描かれた風景の中では調和と違和感が混じり合っているようです。

 

最後に

本展覧会を通して、数多くのスウェーデン絵画に触れることができました。

今回展示されていた作品の中には、インターネットで検索をかけてもあまり情報がヒットしないようなものも多くありました。しかし、実際に絵画の前に立ってみると、これほど個性あふれる作品を遺した画家たちの存在を知らずに過ごしてきたことが、とても惜しく感じられました。

 

部屋から一歩踏み出して、外へ出ること。

美術館はいつだって、私たちがまだ知らない世界に出逢わせてくれます。

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