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「神保町」をおしゃれに歩く。古本屋だけじゃない、カルチャーの街の歩き方【新参者コラム】

電車を降りてホームに立つと、目の前には一面、本棚を思わせる壁が広がっている。

神保町。

明治初期、周辺に学校が次々と設立されたことをきっかけに、学生たちが教科書を求めて集まる街として発展したこの場所は、長らく「本の街」として親しまれてきた。

そんな神保町が今、再び若者たちの注目を集めているらしい。

数多の古書店はもちろんのこと、老舗の喫茶店やギャラリー、レコードショップ、カレーの名店まで。歴史ある街並みの中には、新しいカルチャーとの出会いがそこかしこに隠れている。時代を超えてなおも惹きつけ続ける理由は、一体どこにあるのだろうか。

 

誰かが新しいことに挑戦するハードルを限りなく0に近づけたい。そんな思いから、体験談を初心者目線で届ける「新参者コラム」。

第2回のテーマは、「神保町まち歩き」。

ほとんど神保町に降り立ったことのなかった筆者が実際に歩いたモデルコースを、この街で見つけた魅力とともに紹介していく。

 

さあ、日常にひっそりと潜む非日常を探しに出かけよう。

 

12:00 はじめまして、神保町

正午ぴったりに神保町へ降り立つ。日曜にしては人がまばらで、居心地の良さが空気感で伝わる。

実は、この日の目的は神保町の街そのものを楽しむことではなく、「神保町よしもと漫才劇場」でお笑いライブを観ること。

そのため事前知識をなにも入れずに降り立ってしまい、開演までの時間をどう過ごそうかと戸惑い、駅前でサイドステップ。

神保町といえば古本屋、カレー、喫茶店の街。歩いていれば何かしら素敵なお店に出会えるだろうと思い、まず向かったのは「すずらん通り」。特に行くあてもなく、名前の可愛らしさに惹きつけられて歩き始めてみた。

すると古風なものからモダンなものまで、さまざまな書店が肩を並べているのを目にしてようやく本の街・神保町に訪れた実感が湧く。

どうやら日曜が定休日の店も多く、それゆえ人通りもやや閑散としているのだろうか。

気になるお店がたくさんあったが、まずは腹ごしらえをと思い、気になるお店の外見を記憶しつつご飯屋さんを探す。

 

12:30 提供が速すぎる!神ベトナム料理屋【ベト屋】

たどり着いたのは、カレー屋でも喫茶店でもなく、ベトナム料理屋。

5月の下旬とはいえどももうすでに蒸し暑く、レモンの酸味でさっぱりとしたフォーが無性に食べたくなってしまったのだ。

店内は明るく、すっきりとした涼しげな内装。女性のお一人様も多く、非常に過ごしやすい雰囲気だ。ミーハー人間の筆者は、とりあえず「定番」と書かれた牛肉フォーをオーダー。

セルフサービスのお茶を注ぎ、気持ちを落ち着かせてフォーを待っていると、落ち着き切る前にフォーが到着。

オーダーを見越して事前に作っていたんじゃないか…?と思うくらいの速さ。

しかし味は文句なしの美味しさ。レモンを搾ると、酸味と塩っぽすぎないスープが見事に調和して、芯まで染みてくる。

入りやすくて過ごしやすい、そして料理提供も速い、とてもスマートなベトナム料理屋さんだった。

カレーや喫茶店などのいわゆる神保町のイメージを形作るカルチャー以外にも、たくさんの魅力的なお店がありそうだ。

ふらっと立ち寄ったお店で、その片鱗を見ることができ、期待値がぐっと上がる。

 

13:30 書店の王様『三省堂書店神保町本店』の本気のリニューアル

約4年の建て替え・改装工事期間を経て、2026年3月にリニューアルオープンした三省堂書店本店。

筆者が一度、神保町に降り立ったのは4年以上前、リニューアル前の三省堂書店がまだ隆盛だった頃だ。

建物の閉店は訃報のようなもので、その本店が取り壊されるというニュースを知った当時、1881年から脈々と続いてきたこれまでの歴史が一掃されてしまうことに密かに絶望していた。

そして、念願のリニューアルオープン。どんなもんだとやや腕を大振りにしながら一歩入ってみる。そこに広がっていたのは、従来の書店のイメージとはかけ離れた、広々とした空間。

新店舗の掲げるテーマは、「歩けば、世界がひろがる書店」。店内には随所に仕掛けが散りばめられているようで、1階エリアは「知の渓谷」と言うらしい。アーチ状の店内には壁に向かうにつれて段々と高くなる本棚がいくつも並んでいる。手前の棚から後方まで、自然と視線が流れてしまう空間は文字通り「知の渓谷」を体現している。

興味関心のある本棚を見るだけで終わらず、そこから確実に新しい発見や出会いがある。欲しい本がワンクリックで簡単に手に入る時代に、即時性ではなく「偶然性」というところに重心を置いたこの場所は、書店というよりもテーマパークのような味わい深さがある。

令和のこの時代に、ここまでエンターテイメント性のある書店の誕生を、誰が予想できただろうか。書店の意義を誇示しながらも、時代の遅れを感じさせない新たな「三省堂書店」は、これからどこまで名を轟かせていくのだろう。

 

15:00 『神保町よしもと漫才劇場』で昼のひと笑い

そしていよいよ本日の目的であるお笑いライブを観に、よしもと漫才劇場(通称ジンゲキ)へ。

2020年にオープンしたばかりのジンゲキは、シックなグレーを基調としたスマートな外装が特徴的である。

劇場では、新進気鋭な若手芸人の寄席公演や企画公演が毎日実施されており、活気に満ち溢れたライブを間近で観劇することができる。

筆者自身、漫才を観劇するのは初めてだったが間近で観るお笑い芸人さんたちはテレビで観るよりも臨場感があって、一体となって楽しむことができた。

 

16:30 入店するだけでおしゃれ気分!書籍のセレクトショップ『stacks bookstore』

ジンゲキを出てすぐ横にあるのが、『stacks bookstore』。ジャンルレスにセレクトされた書籍とともにアパレルや雑貨も展開されていて、こじんまりとした店内でありながらも出会いの糸口がそこかしこに散りばめられている。

店の奥には、大きなセラーが。各国のビバレッジがずらりと並ぶ光景は、本屋ではなかなか目にすることがない。本とお酒が自然に共存する空間は新鮮で、つい長居したくなってしまう。

筆者はビンテージのポスト風の貯金箱と、手作りの小物を購入してみた。

思わず手に入れたくなるようなアイテムが多数揃えられているので、ジンゲキのあとにはふらっと立ち寄りたい。

 

17:00 本棚に住所がある?!モダンな書店『PASSAGE by ALL REVIEWS』

参照:PASSAGE by ALL REVIEWS公式ホームページ(https://passage.allreviews.jp

来た道を辿り、ふたたび「すずらん通り」へ。本日の最終地点として選んだのは書店『PASSAGE by ALL REVIEWS』。

通りに向かって大きく開かれた扉に誘われるように店内へ足を踏み入れる。そこにはまるで、秘密基地に迷い込んだかのような温かく居心地のよい空間が広がっていた。

店内を歩きながら本棚を眺めていると、棚ごとにまったく異なる個性を持っていることに気づく。というのも、この書店は一棚一棚に店主がいる「共同書店」。区画ごとに実在するパリの住所が付けられており、それぞれの棚には店主のこだわりが色濃く表れている。

ひとつとして同じ棚はない。本の並べ方や選書からは、それぞれの店主の価値観や興味関心が垣間見え、本棚を眺めているだけでその人と対話しているような気分になる。

本の装丁を隠した状態で販売している店主さんもいた。遊び心のある書店というのは、それだけで童心に戻れる。

夜ご飯は、3階に併設されている『bis! BOOKS & CAFE』へ。

ヨーロッパの邸宅を思わせる落ち着いた空間の中で、いよいよ神保町らしくカレーを注文する。スパイスの香りはしっかりと感じられるものの、癖が強すぎることはなく、最後まで飽きずに楽しめる食べ応えのあるひと皿だった。さらに、コーヒーゼリーとドリンクが付いて1700円という価格設定にも驚かされる。満足度の高さを考えると、その手頃さはなおさら際立っていた。

 

おわりに

今回紹介したモデルコースは、神保町という街のほんの断面に過ぎない。

話を聞くと、インターネットへの掲載をあえて控えているような知る人ぞ知る喫茶店や、まだ見ぬ名店も数多く存在するという。1度や2度訪れただけでは到底味わい尽くせない奥深さこそ、この街の魅力なのだろう。

本と出会い、人と出会い、思いがけないカルチャーと出会う街、神保町。

このモデルコースをきっかけに、ぜひ一度、自分だけの神保町を探しに出かけてみてほしい。

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