ひとりメルボルンがしたい。京島「muumuu coffee」灰谷歩さんインタビュー後編
皆さんこんにちは。
前回に引き続き、今回も東京墨田区のコーヒーとけん玉のお店「muumuu coffee (ムームーコーヒー)」の店主、灰谷歩さんにお話を伺ってきました!
目次
けん玉とコーヒー文化の掛け算
灰谷さんにけん玉のお話を伺うと、とても嬉しそうに語ってくれました。
-灰谷さんはけん玉がお好きだと伺いました。
はい!最初は技が習得できたら飽きてしまうこともあったのですが、実際にプロの技を目の前で見たことがきっかけで、本気でけん玉に取り組むようになりました。
あと、けん玉のいいところって、すぐに始められてすぐにやめられるところなんです。
例えば楽器だと手入れが必要だけど、けん玉ならその必要がなくて手軽にできるし、お店にも簡単に置けるし、誰かがやっていたら僕もやりたくなります。
-お店に置いてあるけん玉のデザインがとても印象的ですね。
けん玉は世界中にブランドがあります。まずは好きなデザインを見つけて買おうとしたのですが、どうせ輸入するならお店で扱ってみては?と思い、少しずつお店に置き始めました。
そしたらそれをきっかけにどんどん人が来るようになったんです。今はオンラインでも販売しているし、いろんな種類のけん玉があるので、選んでいても楽しいと思います。10年くらいけん玉の販売を続けていて、今は下手したらコーヒーの売上よりもけん玉の方が売れているかもしれません(笑)
ー好きなものを追求していたらいつの間にかけん玉のコミュニティができたのですね。
そうですね。結果論としてですが、けん玉とコーヒー文化の掛け算は相性がすごく良いと思います。
僕は店にいるとき人とのコミュニケーションを重視していて、けん玉も人と一緒にやる文化があるので、目的がマッチしているんです。
誰かとけん玉をやりたい人同士が出会えたり、コーヒーを飲みにいらっしゃっただけの、けん玉とは無縁だった人も混ざったりして、いろんな年代、職業、国籍、考えを持った人がけん玉を通じてコミュニケーションをする。それが面白い現象だなって思います。あとは、けん玉持参の人が来たとき「けん玉やるんですか?」って話が振りやすいところも良いです。
自分だけのメルボルン生活を
灰谷さんは自身のこれまでを振り返り、「自分がやりたいことを信じてやり続けると、ついてきてくれる人はついてきてくれるし、やりやすい環境に変化していく」と語ります。
そんな灰谷さんの想いは、自身のカフェスタイルにも表れていました。
心地良いと思える空間「何時間でもいてほしい」
ーカフェのコンセプトやスタイルは決めていらっしゃるのですか?
特に決めていないです。ただ、コーヒーが好きだから美味しいコーヒーをちゃんと提供したいと思っているけど、やっぱり僕は"人との時間"を重視したいので「日常的にまた行きたいな」と思えるコーヒー屋を意識しています。
だからお客さんの回転率はめっちゃ悪い(笑)でも、それは最優先ではない。むしろ長く居てくれると、その人にとって居心地が良いのだと思えて嬉しいこともある。ちゃんとコミュニケーションが取れて、僕もお客さんと一緒に混ざれるような、ここにいる皆が心地良いと思える空間をつくりたいです。
ひとりメルボルンをやろう
それから、僕はメルボルンのコミュニティの在り方やカフェ文化、ライフスタイルが本当に好きだったので、自分でお店を開いたら「ひとりメルボルンをやろう」と決めていました。
価値観次第で物事の捉え方も環境も変わるだろうと思っていたので「やりたいことをやろう」と、僕の価値観を信じてみました。
実際やってみたらコミュニケーション重視の接客になったし、自分がメルボルンで受けて気持ちよかったことを実践して、気づいたら"ひとりメルボルン生活"ができていました。
街との相性もありますが、やっぱりやったもん勝ちだと思います。
pay it forward
ー入口付近の壁に貼ってあるメッセージはなんですか?
あれはペイフォワード(pay it forward)といって、お客さんが次の誰かのために前払いをしているんです。
例えば、今の会社をやめたかったらこの「最後の一押し。500円分のコーヒーをプレゼント」というのを使って、「辞めるなら今だよ」って背中を押してもらったうえにコーヒーも奢ってもらえる。また別の方は「けん玉ではじめてのトリックをタグ付けしてビデオをアップしてくれたら一杯好きなコーヒーどうぞ」とか。
それぞれこのメッセージに当てはまる人に対して、このメッセージを書いた人が先にお金を払ってくれているんです。
ーこうゆう文化があるんですか?
あるみたいです。日本だとあまりないかもしれないけど、「こういうの面白いよね」って思って実験的にやっています。カフェのサポートにもなるし、誰かお金に余裕がない人のためにもなるので。
京島の今後「みんなが自由に表現しやすい環境であってほしい」
ー京島がどんどんディープな街へと変化していますが、今後どうなっていきたいと考えていますか?
一過性のブームでなく、文化としてゆっくり変化しながら今のような面白みも含めて育っていってほしい。形としては変わっていっても、色んな人たちが混ざっているこの状態、まずは受け入れてみようという体制で古き良きものと新しいものが良い感じで混在し共存できたらいいなと思います。
ーそういう感性も大事ですもんね。
新しいものや変化って基本的には歓迎と言いつつ恐れられている部分もあって、でも経験を重ねるとだんだん許せるものも増えていくと思うんです。
いま社会的に課題だと考えているのは、問題になりそうなことを最初から起こさないようにする傾向があること。わかりやすくいうと遊び場がなくなっていくのもそうで。なにが問題なのか思考を止めてしまっているようにみえる。
だから今はその逆の実験をしています。誰でも使える卓球台を外に置いて、いつでも誰でもその卓球台を使って自由に過ごせる空間をつくる。丁寧に積んでいく必要があるけど、もっと皆が自由に使って自由なマインドが得られるきっかけになったら嬉しいです。体験することってとても大事なんです。
僕にとって面白くない街というのは「ここにきたらこれをやってください」って選択肢がない街。来た人が自由にやりたいことをやれる、周りの人もそれを許容できる環境になっていければいいなと。僕が「こうなってほしい」っていう具体的なものはない。みんなが自由に表現しやすい環境であってほしいです。ただ僕の場合、自由と迷惑行為は違うと思っていて、まわりの自由も奪わないようにという考え方を持っています。
ホストファミリーの親子「受け入れること」
ワーキングホリデーで馬の世話したりフルーツ農園で肥料を撒いたりしたと話しましたが、そのフルーツ農園でお世話になったホストファミリーの親子のやり取りをみて、感じたことがありました。
その親子はとても暖かいホストファミリーで僕にとても親切にしてくれたのですが、そこで影響を受けたのは、親が子どもをめちゃくちゃ褒めていたことです。ある日、子どもがバンダナを付けていて、僕はそれをみて心のなかで面白がってたんです。でもお母さんは「セクシーよ」って子どもをめちゃ褒めていて。
僕は反省しました。「自分のような行いが選択肢を狭めているんだ」と気付いたんです。
親が「あんたそれ似合ってないわよ」と言ったら子どもは「俺こういう格好だめなんだ」ってどんどん親好みになっていくじゃないですか。でも親が何でも許容してむしろ褒めてあげたら、子どもはガンガン進んでいろんなことができる。そういうことを、僕は向こうの生活で勝手に感じて、勝手に学びました。
この経験から「受け入れること」ってすごく大事だなと思ったので、いろんなことを許容していきたいし、自分が「いいな」と思ったことはなるべくやろうと思うようになりました。
学生の皆さんへ「小さな出来事で選択肢は持てる」
ー将来への不安や悩みが多い学生に向けて、灰谷さんからメッセージをいただけますか?
やっぱり色んな場所に行って色んな人に出会ったほうが良くて、経験を通して沢山の選択肢を持つことが一番だと思います。
海外でも国内のどこかでも興味がありそうなところ、漠然とした理由でもよく知らないところでも、とにかく行ってそこの人とコミュニケーションしてみてください。
もちろんカフェでも。例えば日本と海外のカフェでのやり取りを眺めるだけでも、もしかしたらその人にとってはカルチャーショックを受ける可能性がある。意外とその小さな出来事の中からでも選択肢は持てるはずです。
人によっては日本のほうが好きだなとか、海外の方が好きだなとか、ひとつひとつ経験していけばきっとやりたいことが見えてきて、選択肢も増えると思います。
とにかく動けるときに色んなところに行って、いろんな人に会うことがなによりも大きな刺激になります!ワーキングホリデーも長期滞在できるからおすすめですよ!
muumuu coffee 店舗情報
- 東京都墨田区京島3-50-14
- 定休日:木曜日※臨時休業ありInstagramで確認ください
ウェブサイト
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