
モネ没後100年。瞬間を永遠に変えた画家クロード・モネの眼を通して見る、鮮やかな追憶【クロード・モネ―風景への問いかけ】
19世紀後半の代表的な画家クロード・モネの作品は、どれだけ時間が経っても色褪せることのない鮮やかな色調と速やかなタッチが特徴的です。
そんな彼の真骨頂とも言える作品が数多く並ぶ展覧会「クロード・モネ—風景への問いかけ」が2026年現在、東京都・アーティゾン美術館にて開催されています。
没後100年という節目に際して開催されたこの展覧会では、「睡蓮」をはじめとする代表的な連作以外にも、モネが生涯描いてきた作品が多く展示されており、詳細な解説とともに彼の生涯を細部まで知ることができます。
本記事では、印象派画家が大好きな現役大学生の私が、展覧会の見どころをご紹介します!
展覧会のレポートとともに、何度でも絵画の前に足を運びたくなるようなクロード・モネの魅力に迫ります。
目次
展覧会 基本情報
展示名:『クロード・モネ ― 風景への問いかけ』
場所:アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)
会期:2026年2月7日(土)~5月24日(日)
値段(税込):日時指定予約制
ウェブ予約チケット:一般 2,100円 / 学生 無料(要予約)
窓口販売チケット:一般 2,500円
今回の展覧会は、類い稀に見る大規模展です。頻繁に数々の印象派画家の展覧会に足を運ぶ筆者でさえ、これほど見応えのある展示とはあまり出会えないと度肝を抜かされるほど、モネの魅力が凝縮されていました。
会場には、世界最高峰のモネの絵画コレクションがオルセー美術館やその他国内美術館から一挙に集められ、約140点を1日で堪能することができます。
そしてこの展示、なんと大学生以下は無料で入場できます!!!
国内でこんなにも沢山の大作を一挙に鑑賞できる機会はなかなかありません。
百聞は一見に如かずです。悩んでいるなら、絶対に足を運びましょう!
モネのここがスゴイ!展覧会を100倍楽しめる注目ポイント!
展覧会では、モネの初期から晩年の絵画まで時代の流れとともに鑑賞できます。生涯を画家という職業に注いだモネの人生はどのようなものだったのでしょうか。
クロード・モネがどのような人物か知っておくと、展覧会をより一層楽しめることでしょう。そこで本記事では、展覧会に行く前に知っておきたい注目ポイントを4つご紹介します!
モネほどの巨匠も、昔は誰かに憧れていた!!

WikiArt (https://www.wikiart.org/fr/claude-monet/vue-prise-a-rouelles-1858)
本展覧会の冒頭では、モネが最初に制作したとされる油彩画《ルエルの眺め》が展示されています。
モネは幼少期から地元ル・アーヴルで現地の人々の似顔絵を描いており、絵が上手な少年として名が知られていました。そんな彼が画家を志すきっかけとなったのが、ウジェーヌ・ブーダンとの出会いです。
海景画を多く手がけてきたブーダンの絵画に導かれるようにして、モネは風景画を描き始めます。
我々の知っている印象派画家としてのモネのイメージからはまだ少しかけ離れていて、やや写実的ともいえる油絵です。

(https://a-delp.blog.jp/2023-05-01_Monet)
そしてその横に展示されていたのが師であるブーダンによる作品《ノルマンディーの風景》です。
詳細を知らない人が見れば、「いずれも同じ人が描いたのでは?」という印象を受けてもおかしくはないほど、筆のタッチや色使いが非常に似ていて、モネがブーダンから多くを学んだことがよく分かります。
今では印象派の代表画家と称されるモネにも、かつては誰かを師として学びを深めていた時期があるのです。
誰にでも初めてがある。その事実が、新たに何かを挑戦する人の背中を押す原動力になりうるのではないでしょうか。
モネは絵画界のアンミカ?!「雪の色」を青や黄で描く、至高の色価
19世紀の人々にとって、越冬は快適なものであったとはいえません。しかし、白一面に覆われた美しい街を目前にして、モネはそれをキャンバスに留めることをやめませんでした。
雪景色はまた、モネが色彩表現を探究する上でふさわしい題材でもありました。
全ての色彩は、周囲の色との相互作用によって成立しています。すなわち、雪は白いけれど、一口に白と言っても、それが太陽に照らされている雪なのか、木陰に潜んだ雪なのか、シチュエーションによって用いる色が異なるということです。このように、色と色とを並べることで生じる相互関係のことをヴァルール(色価)といいます。

上原美術館(https://uehara-museum.or.jp/collection/westernpainting/claude-monet/)
そして、モネは自然を描く際に一度も黒を使ったことがないと言います。
自然界には純粋な黒という色は存在せず、単に暗色といえどもそれは多くの色が重なって生じたその瞬間限りの色であると考えていたからです。自然の中の陰影を表すために、色使いを模索し続けたがゆえの究極の色価を雪景色の作品群を通して味わうことができます。
そんな雪景色の中でも特に本展覧会の目玉を飾っていたのが、1869年に描かれた《かささぎ》。

WikiArt (https://www.wikiart.org/en/claude-monet/the-magpie-1869)
没後100年を記念して修復が行われたモネの絵画のうちの一つである本作は、一世紀以上も前に描かれた作品であることを疑ってしまうほどの鮮やかさを持ち合わせています。
モネの目には、どのような景色が映っていたのでしょうか。想像が広がります。
キレイなものは遠くにあるからキレイなの
印象派の作品を見ると、ついSuperflyの『愛を込めて花束を』の歌詞を思い出してしまいます。
1871年から約7年間、モネはパリ近郊のアルジャントゥイユに居を構えました。モネはこの地の穏やかな情景を題材に多くの作品を手掛け、この間に画家の友人とともに開催した展覧会で「印象を捉え、感覚で描写している」と批判されたことをきっかけに、「印象派」という言葉が定着したのです。
印象派の作品の魅力は、遠くで見るのと近くで見るのでは全く印象が異なるところにあります。アルジャントゥイユで手掛けたモチーフとして代表的なものの一つが、川面に浮かぶヨットです。

WikiArt (https://www.wikiart.org/en/claude-monet/regatta-at-argenteuil)
《アルジャントゥイユのレガッタ》からはモネの筆致の大胆さが伺えます。至近距離から眺めると、湖を描いた一面の青い絵の具の上から赤や緑などの色をササッと横線で乗せていて、平面さを強調しているようにも思えてしまいます。
しかし、少し離れたところから見てみると、突然、絵画が立体的に浮かび上がります。これは、実際の絵画を目の前にしてこそ味わえる体験です。
「綺麗なものは遠くにあるから綺麗」とは思いつつも、近くで見るとまた、遠くから見ているだけでは気づけない新たな驚きや発見があります。
全体を見据えたモネの、腹の据わった潔い筆使いに圧倒されることでしょう。
先鋭な美的感覚で、見えないものまで描いた
モネは1883年より居住を始めたジヴェルニーで晩年まで絵画を描き続けます。
そしてこの頃から、一つのものを一箇所から何回も描く「連作」にこだわりを持つようになります。真に何かを描くためには、モチーフに対する真摯な姿勢が必要であると考えていたためです。
モネが風景画においてとりわけ追求したのは、「捉え難いものを描写する」ことです。光の移ろいや大気の運動など、視覚として認識し得ないものまでもをテーマとして掲げました。
連作のモチーフの一つであるロンドン国会議事堂を描いた作品《ロンドン国会議事堂、霧の中に差す陽光》は、見る人全員が息を呑むほどの美しいオーラを放っています。

WikiArt (https://www.wikiart.org/en/claude-monet/houses-of-parliament-london-sun-breaking-through)
私たちが時に夕景に目を奪われてしまうような体験を、モネは絵画という表現媒体において実現してしまったのです。
夕日が差し込むことで輪郭がぼやけた国会議事堂のシルエットと、光を纏いながら広がる周囲の水面。モネはただ情景を描いたのではなく、一つ一つの筆致に自身の思想や記憶の断片すらも組み込んでしまった。気づけば、猫にまたたびといった表情で恍惚と絵画を眺めていました。
この感動を反芻できるようにと、カメラに収めて、後から見返してみるも、すでに効力を失っていることに気がつきます。その場限りの、絵画の前でしか味わうことのできない情動があり、そんな「瞬間的な美しさ」こそがモネが私たちに絵画を通して伝えたいことなのでしょう。
終わりに:百聞は一見に如かず
現代の人々は綺麗なものを目にした時、それを残すためにまずは写真に収めます。
しかし、例えば月を撮影したとして、それが実物以上に美しい光を放つことはそうそうありません。一方で、モネは絵画という形であらゆるものを捉え続けてきましたが、そのどれもが本物の景色同様、あるいはそれ以上の美しさを放っています。
モネには万物から美しさを引きだす技術があり、それはおそらく彼の絵に対する情熱や自然への敬意からくるものなのでしょう。100年経った現在もなおモネの作品は輝きを放ち続けています。
目前にして初めて美しさを発揮するモネの作品を、ぜひこの機会に。

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