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【本を読もう!】編集者オススメ、初夏にぴったりの小説5選

こんにちは、ライターのよしザわです。
平日は東京の小さな出版社で、編集者をしています。決して多読家ではないですが、紙の本が大好きです。

今回の記事では、そんな私が、今の季節にぴったりな初夏に読みたくなる小説を紹介します!

おうち時間のオトモに、通学中の暇つぶしに。
YouTubeとかSNSもいいけど、たまには本も読んでみませんか?

『神去なあなあ日常』

主人公の平野勇気は、高校を卒業したばかりの18歳。適当にフリーターをするつもりが、先生からの紹介で林業の世界へ。横浜の都会暮らしから一変、三重県の「神去(かむさり)村」で暮らしていくことになってしまいます。このお話は、そんな主人公の色彩あふれる1年間を記録した物語です。

体力仕事は大変だし、村の人達はよそ者に厳しい……。わからないことばかりで、最初こそ逃げ出そうとしていた勇気。しかし、自然と共に生きることの豊かさを知っていく中で、神去村のことも、林業のことも好きになっていきます。

私が印象的だったのは、二章のお花見の場面です。山を飾る草花や、大輪の桜の木の描写が綺麗で、まさに「どんちゃん騒ぎ」している村の人たちの様子も目に浮かびます。みんなで花見を楽しんだ後は、山への感謝を忘れません。桜の木を囲んで膝をつき、黙ってお礼を捧げるシーンに感動しました。

タイトルの「なあなあ」は、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」という意味で、緑に囲まれた田舎を象徴するような言葉です。ゆったりとした世界観にとても癒されますよ。

いつもの忙しい生活からちょっと離れて、「なあなあ」に読んでみてください。

映画好きの人は、この本を原作になっている『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』もオススメ!

『春の庭』

151回芥川賞の「春の庭」、「糸」「見えない」「出かける準備」の4篇がまとめられた小説集です。

本に詳しくない人でも、「芥川賞」という名前は聞いたことがあると思います。

芥川龍之介賞
文藝春秋の創業者・菊池寛(明治21年~昭和23年)が、友人である芥川龍之介(明治25年~昭和2年)の名を記念し、直木賞と同時に昭和10年に制定しました。雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品のなかから、最も優秀な作品に贈られる賞です(公募方式ではありません)。

各賞紹介|公益財団法人日本文学振興会

純文学は、恋愛小説や日常を切り取ったような作品が多く、美しいことばで書かれていることによる芸術性の高さが特徴です。

「純文学」と聞くと、なんだか難しそうに感じますが、写真や絵を見るときのような気持ちで気軽に読んで見るのがいいんじゃないかと思います。

この本の著者、柴崎友香さんは季節や光の表現が本当に綺麗なんです!

屋根の先には、空と雲が見えた。朝からよく晴れていたが、雲が出ている。真っ白の塊。まだ五月だが、真夏のような雲だった。

「夏の庭」

春の暖かい日差しや、蒸し暑くなってきた初夏の頃、照りつけるような夏の太陽。本の世界に入りこんで、一緒に月日を過ごしているような気分になれますよ。

ぜひ、お気に入りの一文を探してみてください!

『植物図鑑』

お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか

『図書館戦争』で有名な有川浩さんの、野草系恋愛小説。

ある日、主人公さやかは、マンションの玄関先で行き倒れていたイケメン「樹(イツキ)」を拾います。どうやらお金も帰る場所もなく困っているらしいのです。酔っぱらっていた勢いもあって、さやかはイツキを家に入れてあげることにしました。

翌朝、泊めてくれたお礼に朝食を作っていたイツキ。家事がダメダメでろくに料理もしないさやかは、すっかり胃袋を掴まれ、素性も知らないままイツキに同居を提案するのでした。

突如はじまった男女の同居生活。2人が恋に落ちていく様子に目が離せません。

この本は、ヘクソカズラ、タンポポ、ノイチゴなどなど、名前をあげたらキリがない程、たくさんの野草が登場します。イツキが作る野草料理がどれも美味しそうで、作ってもらえるさやかが羨ましい……。

読み終わった後に外に出ると、ついつい目線が下に下がります。外に出るのがとっても楽しくなりますよ。

『和菓子のアン』

本を読む前に、緑茶の準備をお忘れなく!

デパ地下の和菓子屋さん「みつ屋」で巻き起こる、和菓子ミステリー3部作の第1弾です。

主人公の梅本杏子は、身長150cm、体重57kgの18歳。特技は食べること。
体型を気にしているものの、お菓子が大好きでついつい甘い物に手が伸びてしまいます。

ミステリーと言っても、殺人事件が起きたり、怪盗が出てきたりするわけじゃないんです。

なんでこのお客さんは、あのお菓子を買ったの?
このお菓子に込められた意味ってなんだろう?

そんな、お菓子にまつわる楽しいナゾを解いていくストーリーになっています。

「みつ屋」で働く人たちはとっても個性的で、和菓子にまつわる豆知識も面白く、夢中になって読んでしまいました。お腹が空きます……。

『ニューノーマル・サマー』

タイトルにも「サマー」とある通り夏のお話ではありますが、だんだん暑くなってくる初夏の時期にもおすすめです。

ストーリーの中で「ソーシャルディスタンス」「オリンピック」「フェイスシールド」などの単語が登場し、コロナが広がったばかりの日本が舞台となっています。

2020年の夏を迎えた大学生、8人の小劇団「不死隊」は、『4回転サイタマ』の公演に向けて準備を重ねていきます。しかし、去年の夏とはすっかり変わってしまった社会では、思うようにいかないことも多く……。

フィクションの世界では、コロナを扱わない作品も多いですが、この小説は、私たちみんなが感じていたやりきれない感情――よくわからない新しいウイルスに対する不安、自粛によって行動が制限されるもどかしさ、やりたいことができない苛立ち――を見事に描いています。

残りの大学生活をどう使うのか、なにができるのか、このコロナ以降の世界で。それは自分で考え、行動するしかない。

失われてしまう学生生活に食らいつく主人公たちに、胸が熱くなる青春小説です。

いまの季節にぴったりの本を読んでみよう!

初夏に読みたい小説を5つ紹介しました。気になる本はありましたか?

電子書籍もいいけど、私は本屋さんに行くことをオススメします。本棚を見ながらいっぱい迷って、「コレだ!」と思う本を選ぶ体験は、とても充実して楽しいものなんですよ!

同じ10分でも、スマホを見て過ごすより良い時間が過ごせるのではないかと思います。1冊読み切れなくても、読むのがゆっくりでも大丈夫!ぜひ、気軽に本を読んでみてくださいね。

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