旅をする意味って?自分探しの旅はもう古いーこれからは”自分作りの旅”の時代【旅のみちしるべ】
皆さんは「自分探しの旅」というフレーズを聞いたことはありますか? 多分、聞いたことがあると思います。
でも僕は個人的に「自分探しの旅」が好きじゃないし、推奨もしません。なぜなら目的の有無で、旅の質が大きく変動するからです。
ただ感動を味わうためだけに旅をするのか。それとも将来の自分のために旅をするかで、これからの人生が大きく左右されるのは間違いないでしょう。
では具体的に、旅にはどのような意味があり、どのような目的があるのでしょうか。
本記事では、実際に旅をしている僕の体験談を交えながら、旅をする意味について解説していきます。
目次
【はじめに】旅は"自分探し"に向かない
まずはじめに、なぜ僕が「自分探しの旅」が好きでないかを、もう少し詳しく解説しようと思います。
先ほど「目的の有無で旅の質が大きく変動する」と述べました。例えば英語を勉強しようと思ったら「なぜ英語を勉強するのか」という目的を明確にする必要がありますよね。英会話ができるようになりたいのか、それともTOEICでスコアを取りたいのかで、英語の勉強方法は大きく変わります。
それと同じで、旅も目的次第で、旅のやり方が大きく変わってしまうのです。
それで「自分探し」という目的に関して言うと、僕は必ずしも「旅が自分探しに適している」とは思えません。
たしかに、全長1,000kmある熊野古道や、同じく全長1,000kmある東北のみちのく潮風トレイルをひたすら歩くのであれば、これは「自分探し」に繋がるかもしれません。「大自然の中で自分1人だけ」という状況に置かれれば、必然的に自分と向き合う必要があるからです。
しかし、世界的な観光地であるニューヨークやパリに訪れたり、南国の島に訪れたりするとどうでしょう。おそらく実際に赴くことで、良くも悪くも、とても強い刺激を感じることになります(感動)。この"刺激"というのは、あくまでも外部からのものなので、自分の内面を見つめ直すきっかけにならないと僕は考えます。
もし本当に「自分探し」をしたいのであれば、いっそのこと外部からの情報を遮断してみてはどうでしょうか。具体的には、自室に引きこもり、同時にインターネット回線もオフにするのです。これだけ外部からの刺激をシャットアウトすれば、必然的に自分の内面を見つめるしかなくなります。もちろんお金は一切かかりません。
つまり旅よりも引きこもりの方が、自分探しに向いている上にコスパが良いのです。
せっかく旅をするのであれば「旅でないとできないこと」を目的に据えた方がいいのではないか、というのか僕の持論です。
これからは自分作りの旅の時代
僕は「自分探しの旅」ではなく「自分作りの旅」を強く推奨しています。この「自分作りの旅」は、いわば自己投資です。将来の自分のために、旅します。
そのために必要なのが、やはり目的です。明確かつオリジナリティのある目的を設定するだけで、豊かな旅路になるでしょう。
本記事では、代表的な「旅をする目的」を5つ紹介していきます。
旅をする目的①:非日常を体験する
まず挙げられる目的が「非日常を体験する」というものです。
日本の民俗学者である柳田國男は、日本人の伝統的な世界観として「ハレとケ」を見出しました。ハレは非日常・祭式のことで、ケは普段の生活である日常です。
この考え方に則れば「非日常を体験する」ということは「ハレを体験」するということで、おそらく多くの人にとって旅はハレです。
しかし、現地の方々はどうでしょうか。僕たち観光客にとってはハレの日でも、毎日のように観光客を相手にしている現地の方々にとっては、ケの日でしかありません。そのため、自分自身がハレのつもりでも、"その場がケである可能性"が大いにあるのです。
そこで僕がおすすめするのは「ハレのハレを狙う」ということです。つまり旅先のハレを狙いにいくということ。
その最も典型的な例が、祭に参加することです。例えば京都であれば、7月下旬に開催される祇園祭は間違いなくハレの日でしょう。僕たち観光客はもちろんハレの日ですし、京都の人々にとっても祇園祭はハレの日です。
そのため、7月下旬に開催される祇園祭は、まさに「ハレのハレ」であり、ここで得られるインスピレーションや"気"は、相当なものがあると僕は考えます。ちなみに僕も今年は「祭りの年」と決めていて、ひとまず日本三大祭り(神田祭・祇園祭・天神祭)に赴くことを決めています。
「非日常を体験する」という目的を立てるのであれば、「ハレのハレ」を狙いに行きましょう!
旅をする目的②:異文化や言語を学ぶ
次に挙げられるのが異文化や言語を学ぶということです。
言語については説明不要かもしれません。言語は、自分の人生の選択肢を間違いなく広げてくれます。旅先で言語を学ぶことが有意義であるのは言うまでもないでしょう。
一方、異文化に関しては、主に以下が挙げられます。
- 宗教
- 食事
- 倫理観
- 生活様式
この中で特に注目したいのが「生活様式」です。現在、世界中で「生活様式を学べる旅」が注目されています。
生活様式とは、一言で言えば「ライフスタイル」のことです。その地に住む人々が、一体どのような日々を送っているのかを学ぶことは、大きな意義があると言えます。
言ってしまえば、その人の個性や強みというのは、その人のライフスタイルそのものです。例えば世界トップ企業のCEOは仕事ざんまいの日々を送っているのだろうし、トップレベルのスポーツ選手は日々ストイックな生活を送っているはずです。
それと同じように、その地に住む人々は、その地ならではの生活を送っていて、そこには何かしらの意味があります。
近年はアグリツーリズムが注目されており、現代の旅行のトレンドになっています。アグリツーリズムは「Agriculture(農業)」と「Tourism(観光)」を合わせた造語で、農村や漁村などの自然豊かな場所で休暇を取ることを指します。わかる人にはわかると思いますが、ジブリ作品の『おもひでぽろぽろ』のようなイメージです。
実際、農村や漁村に住む人々は例外なく朝型のライフスタイルとなっています。夜型の生活が多い都会人の方々にとっては非常に強い刺激になることでしょう。僕も港町に滞在するときは、不思議と朝4時起床になります。
その土地ならではのライフスタイルを体感するためには、その土地に赴くしかありません。これも旅にしかできない体験だと言えるでしょう。
旅をする目的④:好きなことに没頭する
自分の好きなことに没頭するのも旅の醍醐味です。
おそらく多くの場合、実際に旅する際は、1人旅やカップル旅のように1人または少人数での旅になると思います。そうすると、周囲の人の目線が一切なくなるので、自分の好きなことに没頭できる環境が構築できるのです。
僕の場合、とにかくアニメが好きです。ということでひとまず、日本中のアニメ聖地を回っています。先ほど「観光は大きな成長が見込める領域」であることを述べましたが、アニメも例外ではありません。では「アニメ×旅」であるアニメツーリズムには、どれほどの可能性があるのでしょうか……。
というように、自分なりの研究テーマを持って、好きなことに没頭できるのが旅の魅力です。もちろんアニメ聖地に限らず、コーヒー巡り・鰻屋巡り・ラーメン巡りなどのグルメ旅や、廃墟巡り、博物館巡り、変な自動販売機巡りなど、その人の個性をフルに発揮した旅が可能です。
一旦、周囲の人の目線を切り離して、自分の好きなことにとにかく突っ込めるのが旅の魅力です。自分なりの〇〇旅を実践してみてはいかがでしょうか。
旅をする目的⑤:新たな出会いを求める
やはり旅でしかできないことといえば「人に会うこと」です。
現代はインターネットの普及で、世界中の人々とコンタクトが取れます。そのため、SNSなどで問い合わせてから、実際に赴くことが非常に簡単になっているのです。
これがSNSの本来の活用法だと僕は考えます。SNSの世界の中で繋がっている気になるのではなく、現実世界の方で会いに行くのです。
また、旅を通じて偶然性の高い出会いを手に入れることもできます。例えばバックパッカーが集まるドミトリーであれば、友達になったり情報交換したりすることができるでしょう。
それと先ほど紹介した通り、自分の好きなことに没頭する過程で、同じ趣味を持つ人に会いにいくのもいいでしょう。例えばコーヒーが好きだったら、コーヒー関連のイベントに参加したり、焙煎士やバリスタに会いに行ったりするといいでしょう。
また、海外のよくわからない辺境で日本人と出会ったら、それはある意味運命です。
今までの人間関係とは別の全く新しい人間関係を手に入れる際にも、旅は有力な選択肢となります。
【さいごに】目的の有無で旅の質は大きく変わる
旅の質は、目的の有無で大きく変動します。そしてできることなら「将来の自分への投資になること」と「現段階で自分がハマっているもの」のどちらかで目的を設定するのがいいでしょう。
例えば、特にハマっているものがないのであれば、将来の自分への投資になりそうなことを目的にします。具体的には英会話習得が良さそうです。英会話取得を目的に設定したら、少なくとも韓国や中国などの非英語圏は旅先の対象外になります。おそらくフィリピンやオーストラリアが「英会話習得の旅」の有力な候補になるはずです。
逆に、ハマっているものがあるのであれば、一旦未来のことは忘れて、とにかくハマっていることに没頭しましょう。スティーブ・ジョブズの名言「Connecting the dots(点と点を繋げる)」のように、思いがけない場面で、自分のハマっていることが活きることがあるはずです。
旅をする際には、荷物だけでなく、目的もお忘れなく。
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