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【自転車事故の実態】を知って安全に利用しよう~令和5年「交通事故統計」から

皆さんは通勤・通学などに自転車を利用していますか?

交通事故が減少している中、自転車が関係する事故が多発しているという報道等がありますが、本当に多いのでしょうか?

ということで、警察庁が公表した交通事故統計から自転車事故を読み解いてみました。

交通事故は確実に減少している

交通事故の死者数は、昭和45年の16,765人をピークに年によって増減はあるものの、昨年(2023年)は2,678人とピーク時の約6分の1まで減少してきました。

自転車が関係する事故は?

下図は、自転車関連事故(自転車が第一当事者または第二当事者となる事故)の件数と全事故件数に占める構成率を比較したものです。

交通事故全体の減少に伴い自転車関連事故も減少していますが、交通事故全体に占める自転車関連事故の割合(構成率)は増加の傾向にあり、令和5年は全事故件数の23.5%を占めています。

グラフ, 棒グラフ

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どのような自転車事故が多いの?

自転車の交通事故というと、やはり相手方は車、つまり車との衝突や接触事故である「自転車対車」というイメージがありますよね。

自転車事故の内容をみると、意外なのですが、増加傾向にあるのは「単独事故」

つまり、建物や塀などの工作物との衝突や接触、堀や川など道路外に転落、段差や路面のくぼみやわだちなどにハンドルを取られたり雨・雪で路面が滑り転倒するというような事故形態なのです。

このような自ら転倒した場合も「交通事故」となります。死傷した人がいる場合には原則として「人身事故」として取り扱われ、「交通事故統計」にも計上されることになります。

下図は自転車に関連する事故のうち「単独事故」「単独事故以外の事故」(車との事故、歩行者との事故,自転車同士等)の件数及び単独事故の割合を示す(折れ線)ものです。単独事故の割合は、増減はあるものの2018年ころから右上がりで高くなっています。

グラフ, 棒グラフ

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どうして自転車事故、特に単独事故が増えているの?

ただちに判断することは難しいですが、以下のような点があるといわれています。

①自転車利用者の拡大

自転車活用推進法の施行や新型コロナなどの影響、健康増進、環境対策などの理由から自転車利用者が増加している。また、電動アシスト自転車の普及などに伴い、高齢者や子供を育て年代の利用者が増加した。

②保険制度等の充実

これまで転倒事故などは警察への事故届出が少なかったが、自転車保険制度の充実、交通傷害保険や学校保険、通勤労災保険などの各種保険制度が充実し加入者が増えたことなどから、警察への事故届出が増えたと推察される。

※警察に届け出ることで「交通事故証明書」の発行が可能になる。

「30日以内死者数」と「24時間以内死者数」をみる

「30日以内死者数」って聞いたことありますか?

「交通事故統計」は、通常「24時間以内死者数」をもとに行っています。

これまで説明した自転車の単独事故における死者数はこの24時間統計に基づいたものです。

しかし交通事故統計にはもう一つあり、それが「30日以内死者数」というものです。これは事故の発生から30日以内に死亡した数を基にした統計です。

この統計は、平成5年から始まったもので、

○国際比較のため
 諸外国が30日以内死者の統計を行っていることから諸外国との比較検討するために必要であったこと。

○交通事故死者の実態を施策に反映するため
交通事故の発生から24時間を経過したあとに亡くなる人の実態を把握し交通事故防止対策を行うことが必要であること。

などから日本でもこの統計を取り入れました。

下図は令和5年中の事故全体や自動車などの区分ごとの「24時間以内死者数」、「30日死者数(24時間経過後30日以内に死亡した数)」、両者の合計である「30日以内死者数(事故発生から30日以内に死亡した数)」を比較したものです。

30日以内死者数「死者数全体」では1.22倍ですが、「自転車」1.45倍で、他の区分よりも24時間経過後の死者数の比率が高くなっています。

グラフ

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下のグラフは、30日以内死者数24時間死者30日死者の構成割合をみたものですが、やはり自転車事故で死亡した人は24時間経過後の死者(30日死者)が他の区分よりも高くなっています。

グラフ, 棒グラフ

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このことは、自転車に乗車する者は自分の身を守る手段が物理的になく、いわば無防備の状態であり、事故の際の衝撃等により24時間は生命が維持されても、24時間経過後に亡くなる人が多いことを示しています。

※歩行者も無防備であり同様のことがいえるが、一方歩行者の場合相手方が自動車であることが多く衝突時のダメージも大きいことから24時間内に死亡する人も多い。

自転車事故では頭部が損傷する

死者の主な損傷部位をみると、自転車事故の場合24時間以内の死者は「頭部損傷」構成率が55%ですが、30日死者(24時間経過後30日以内の死者)の場合の「頭部損傷」は約83%と高くなっています。

このデータからは、自転車の場合には頭部の損傷被害が多く、かつ頭部損傷により24時間経過後に死亡する人多いといえます。

テーブル

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歩行者との事故が増加

自転車と歩行者の事故は、令和15年以降約20年間の推移をみると(下図参照)、平成20年ころをピークに一旦減少していますが、平成28年から急激に増加し、昨年(2023年)は平成28年の約1.4倍に増加しています。

そのようなこともあり、各自治体では「自転車保険の加入義務化等」を内容とする条例を制定・改正してきました。

グラフ, 折れ線グラフ, ウォーターフォール図

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自分に適した自転車保険等の加入を!

自転車の単独事故や歩行者との事故は前述のとおり増加傾向にあります。

したがって、自転車を利用する方はこれまで以上にルールを順守し自転車の安全な利用に努めることともに、自転車事故の実態や自転車の利用目的に応じて

  • 歩行者事故など損害賠償責任が生じた場合に対応できる損害賠償保険(自転車保険等)
  • 自転車の単独事故に備えた保険、例えば人身傷害補償や医療補償などのある保険

など、自分にあった保険に加入しておきましょう。

ヘルメットの着用は必須

自転車事故による死者の8割以上が「頭部損傷」によって30日以内に死亡しているという実態を踏まえると「ヘルメット」の着用は必須です。

警察庁が公表する「ヘルメット着用状況の致死率比較」によると、非着用者は着用者の1.9倍致死率が高いといいます。

正しく着用することで死亡率を低減することができます。

グラフ, ウォーターフォール図

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おわりに

上記のように交通事故の発生件数や死傷者数などは大きく減少してきましたが、自転車の事故に着目すると全体の減少にともない絶対数は減少しているものの、交通事故に占める自転車事故の構成率は高くなっています。

日常的に誰でも足代わりに自由に使用することができる自転車です。

安全にそして楽しく利用したい自転車。

自転車利用者はもちろん、車の運転者にも自転車の特性や「車と自転車」の事故の現状を知ってもらい、相互理解のもと、安全な利用に一層努めることが重要ですね。

<参考>

○人身傷害補償などのある自転車保険
https://www.jtsa.or.jp
https://saitama-cycle.com

学生総合保障制度

○警察庁
自転車用ヘルメットと頭部保護帽 ⇒ https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/toubuhogo.html

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