AI時代では安定の定義が大きく変わる【公務員=安定じゃない!?】
まるで永遠に続いていくかのような学校生活も、いつかは終わり、将来は社会に出て、働かなければいけなくなります。高校生でも大学生でも、進級するにつれて、進路のことを考えなければいけないのです。
でも正直なところ、未来のことなんてよくわかりません。だから多くの人は「とりあえずそれなりにホワイトな環境で働ければOK」というように考えることでしょう。
そんな中、よく登場するワードが「安定」。どうやら現代の若者は、大きな夢を抱くより、安定を求める傾向にあるようです。筆者もまだ弱冠23歳ですが、たしかに周囲の友人も安定を求めています。
ではそもそも、安定とは一体なんなのでしょうか。個人的には、AI時代になってから、安定の定義が大きく変わっていくと考えます。本記事では、筆者の私見たっぷりに、AI時代における安定について考察していきます。
目次
現代の若者は「安定」を求める
毎年、必ずと言っていいほど「なりたい職業ランキング」というものが公開されます。そのなかでも有名なのが第一生命保険の「大人になったらなりたいもの」です。2023年3月16日に発表された「大人になったらなりたいもの」の概要は以下の通りとなっています。
【小学生】
男子 | 女子 | |
第1位 | 会社員 | パティシエ |
第2位 | YouTuber | 漫画家・イラストレーター |
第3位 | サッカー選手 | 会社員 |
【中学生】
男子 | 女子 | |
第1位 | 会社員 | 会社員 |
第2位 | ITエンジニア・プログラマー | 漫画家・イラストレーター |
第3位 | 公務員 | 公務員 |
【高校生】
男子 | 女子 | |
第1位 | 会社員 | 会社員 |
第2位 | 公務員 | 公務員 |
第3位 | ITエンジニア・プログラマー | 看護師 |
以上を見て分かる通り、小学生の頃から「会社員」がランクインし、歳をとるにつれて「公務員」が上位に進出するようになっています。また「ITエンジニア」や「看護師」もスキルや資格を必要とする職種で、いわゆる「安定した職業」です。
実のところ筆者も、高校生の頃は「会社員になるんだろうなぁ」と考えていましたし、大学2年生の頃は「エンジニアがいいんじゃないかなぁ」と漠然と考えていました。
また、リスクモンスター株式会社が公開した「第8回就職したい企業・業種ランキング」のTOP10は以下の通りです。
順位 | 就職先 | 回答率 |
第1位 | 地方公務員 | 16.2% |
第2位 | 国家公務員 | 11.8% |
第3位 | ソニー | 4.2% |
第4位 | パナソニック | 3.8% |
第5位 | 味の素 | 3.6% |
第6位 | 3.2% | |
第6位 | 資生堂 | 3.2% |
第8位 | 森永乳業 | 2.6% |
第8位 | 明治 | 2.6% |
第8位 | ソニー・ミュージックエンタテインメント | 2.6% |
以上のランキングを見て分かる通り、約4分の1の人が「公務員」を望んでいます。また、本ランキングにランクインしている就職先のほとんどが超が付くほどの大手企業です。
「公務員=安定」の図式は成立しない
さて、多くの若者が公務員になることを望んでいるように思います。しかし、これは個人的な意見ですが、多くの若者は公務員になりたくてなろうとしているわけではなく、安定したいから公務員になりたいのではないでしょうか。
では、なぜ公務員が安定しているのか。よく挙げられるのが「国や政府が潰れない限り存続するから」というものです。営利企業に比べると、国や政府が潰れる可能性は低く、それに加えてリストラもほとんどありません。だから公務員は安定している、という理屈です。
しかし筆者は、ここに異を唱えます。仮に国や政府が潰れなくても、財政を立て直す際に、公務員がリストラされる可能性があるからです。
これは非公式の文書ですが、2002年の衆院予算委員会で取り上げられた「ネバダ・レポート」というものがあります。具体的にどこが調査したものかは明らかになっていませんが、IMF(国際通貨基金)の意向に近いものだとされています。
この「ネバダ・レポート」によると、もし日本がIMFの管理下に入った場合、IMFは財政回復のために以下のような施策を実行するとしています。
- 公務員の総数の30%をカット
- 公務員の給料を30%カット
- 公務員の退職金は100%カット
- 年金は一律30%カット
- 国債の利払いを5〜10年間停止
- 消費税を20%に引き上げ
以上の通り、もし日本が財政を本気で再建する場合、公務員の30%がリストラされ、給料も30%減給され、退職金が丸々無くなってしまう可能性があるのです。現在の日本の財政が2002年当時からさらに悪化していることを考えると、より厳しいリストラ・減給が実行される可能性もあります。
実際に、1997年のアジア通貨危機によってIMFの管理下となった韓国は公務員の数を約5万人カットしました。また、ギリシャも2010年以降の経済危機の際に、IMFの要求を受け入れ、公務員の削減に乗り出しています。
一般的に、財政を再建する際にまず実行されるのが政府の縮小化で、当然のことながら公務員も縮小化されます。現代であれば、デジタルツールの導入で省人化を進めるのがオーソドックスな選択となるでしょう。
日本でも事実上の公務員削減が実施された
また、実際に日本でも、2007年10月から郵政民営化が実施されました。この取り組みで、事実上、約26万人の公務員が削減されています。
民営化とは、これまで国や政府が運営していた機関が、民間経営に移管されることです。それはつまり、公務員がサラリーマンになることを示しています。
郵政民営化は、当時の総理大臣だった小泉純一郎首相が「郵便局は本当に公務員でやる必要があるのか?」という問いから始まっています。そして実際に民営化を実現させたわけなので、公務員が民営化されてサラリーマンになる可能性は、十分すぎるほどあり得る話なのです。
以上が、筆者が「公務員=安定」が必ずしも成立しないと考える理由です。たしかに国や市役所は何かしらの形で存続するのでしょうが、公務員がどうなるかは全くわかりません。
AI全盛の時代では「スキル・資格=安定」も成立しない
勘の良い若者は「一つの企業で勤め上げることが安定に繋がらないこと」をよく理解しています。だから、企業の中で求められる人材ではなく、社会全体で求められる人材になることが大切だと考えるのです。
そこで重要になるのがスキルや資格。例えばプログラミングスキルを始めに習得して、それから自身のキャリアアップに合わせて転職を繰り返します。つまり「スキルや資格を取っておけば仕事には困らない」と考えるわけです。
しかし筆者は、これにも異を唱えます。AI全盛の時代では、スキルや資格の価値がすぐに廃れてしまうからです。
正確に言うならば、AIというよりもテクノロジーの急速な発展という方が正しいでしょう。テクノロジーが信じられないスピードで発展している現代では、3ヶ月に1度のペースで世界のルールが変わります。
例えば従来は、AIを活用するためには一定のプログラミングスキルが必要でした。しかしChatGPTなどのジェネレーティブAIが登場したおかげで、プログラミングをしなくても、AIを扱えるようになっています。
筆者の個人的な感覚では、スキルは3ヶ月程度で習得してしまって、2年ぐらいでそれなりに活躍できるようになっていなければ、変化の激しい現代社会でやっていけないと感じます。具体例としては、最初の3ヶ月で動画編集スキルを身につけ、仕事をこなし始めるのと同時並行で英語を勉強し、語学留学中には音楽制作にも着手する……というイメージです。
もし、常に新しいスキルを習得し続けるのであれば「スキル・資格=安定」は成立するかもしれません。しかし「一つのスキル・資格を取っておけば仕事に困らない」という時代は、既に終わりを告げているように思えます。
「安定」はポートフォリオで考えるべき
では結局のところ、安定とは一体なんなのでしょうか。。これについては個人的に、既に答えが出ています。キーワードは「分散」です。
皆さんは「ポートフォリオ」という言葉をご存じでしょうか。ポートフォリオは業界で意味が異なるのですが、証券業界においては「性格の異なる複数の銘柄を分散して投資することでリスクを分散させる方法」をポートフォリオ運用と呼んでいるようです。
資産運用の世界では「Don't put all your eggs in one basket(全ての卵を1つのかごに盛るな)」という格言が有名です。
例えば10つの卵があるとして、それを1つのかごに持ってしまうと、そのかごが落ちてしまった時に全ての卵が割れる可能性があります。一方で、10つの卵を5つのかごに2つずつ分散することができれば、仮に1つのかごが落ちてしまっても2つの卵しか割れません。
つまり分散すればするほどリスクが分散され、その分、安定度も増すということです。そして筆者は、この「ポートフォリオの考え方」を、働き方にも適用させることをおすすめします。
例えば月に30万円稼ぎたいのであれば、1つの企業で30万円分働くのではなく、3つの企業でそれぞれ10万円分働くのです。そしてできれば、それぞれの企業で全く異なる仕事に取り組めるといいでしょう。例えば企業Aでは営業、企業Bではプログラミング、企業Cでは企画……というイメージです。
「そんなの現実的じゃない!」と思うのであれば、まずは副業、趣味、ボランティアから始めてみてはいかがでしょうか。つまり本業とは別に、もう1つの仕事を始めておくということです。これであれば、「分散」のスタート地点にひとまず立つことができます。
なぜ「個人の時代」が到来するのか?
近年は「個人の時代が到来する」と言われています。ではなぜ「個人の時代」が到来するのでしょうか。これには様々な理由がありますが、その中でも筆者は2つのポイントに注目しています。
1つめは、個人でもそれなりの仕事ができるようになった点です。例えば現代社会は誰もが、ホームページ、SNS、YouTubeなどを気軽に始められます。
それだけでなく、BASEを使えばECサイトも無料で構築可能。また、近年はオンデマンド製造も充実しており、無料でグッズ販売を開始できます。それなりに質の高い製品を作ろうと思っても、クレジットカードの限度額ぐらいのお金で十分な時代です。
以上のように、テクノロジーの進化によって、これまでは企業にしかできなかったことが、個人でもできるようになっています。これが「個人の時代」が到来すると言われている理由の1つです。
そして2つめは、個人の方が企業よりもスピードが早いという点です。
経営学では「イノベーションのジレンマ」という経営理論があります。簡単に言うと「企業が大きくなればなるほど動きが遅くなり、イノベーションを起こせなくなる」というものです。もちろん、これは企業と個人の関係にも当てはまります。
例えば、何か新しいことを始めようとする時、多くの企業ではまず会議が開催されて、そこで議論・検討が行われてしまいます。一方で個人は、議論・検討をすっ飛ばして、思い立ったらすぐに行動可能です。
特に、AI全盛の現代社会では高頻度で社会のルールが変わっていくため、その都度、スピーディーに行動することが求められます。そのため、動きの遅い企業よりも個人の方が、新しいチャンスを掴み取れる可能性が高いというわけです。
【さいごに】フットワークを軽くしよう!
本記事ではAI時代における安定を紹介してきました。では、AI時代における安定を掴み取るにはどうすればいいのでしょうか。
結論から言えば、これは人によって異なります。最初に大企業に就職した方がいい場合もあるし、ベンチャー企業に就職した方がいいかもしれません。また、とりあえず大学に進学した方がいいかもしれませんし、しない方がいいかもしれません。とにかく、人によって異なります。
ただし、安定のキーワードが「分散」であることはほぼ間違いありません。そのため、フットワークを軽くして、自分の興味のあることにどんどん取り組んで、分散化を進めるのがいいのではないでしょうか。
フットワークを軽くするためには、語学とコンピュータ関連のスキルが必要です。例えば英語を話せるようになっておけば、気軽に海外に飛び出し、いろいろな人とお話しすることができます。また、プログラミングでも動画編集でもライティングでも、PCだけで仕事できるようになっておけば、どこでも作業できるようになります。
だから、筆者の個人的な意見としては、まずは「英語」か「コンピュータ関連のスキル」のどちらかまたは両方を習得してみるといいのではないでしょうか。現実的には、本業や学業とは別の時間に「英語」や「コンピュータ関連のスキル」の習得・実践にチャレンジするのがおすすめです。
フットワークを軽くして、好奇心の赴くままにあらゆることにチャレンジして、分散化を進める。これが「好きなことを仕事にする」の本質なのかもしれませんね。
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