「できることから少しずつ環境にいいことを」食と人をつなげる近藤楓のサステナブルな生き方<前編>
SDGsやサスティナブル、ビーガン、エシカルな暮らしなど、テレビやSNSを見れば各所で取り上げられている環境への取り組み。しかし、「環境にいい暮らしを」と思っていても、どこか敷居が高く、何から始めればいいのかわからない10代もいるのではないでしょうか。
そんな環境問題への取り組みを丁寧にほどき、日常に少しずつ提供しているのは近藤楓さんです。楓さんは出身大学の神戸外国語大学や留学先であるイギリスの調理学校、アイルランドのファームで有機農業を学びました。
大学卒業後は、食育に関する仕事に従事。現在は焼き菓子店を経営しながら、持続可能な暮らし方を提案するパラレルワーカーとして幅広く活躍しています。
今回は、楓さんが環境問題に興味を持ったきっかけから、休学留学で環境について学んだことをお話しいただきました。
プロフィール
近藤楓(こんどうかえで)1993年生まれ。愛知県岡崎市で家族とともに北欧の焼菓子店「コンディトリ」や北欧の珈琲店 「 オーテル」を営みながら、自然に寄り添う北欧のライフスタイルを提案している。そして現在は、「できることから少しずつ、持続可能な暮らしかた」をコンセプトに、日々の暮らしからSDGsの実践を目指す「スコシズツ.プロジェクト」の共同代表に就任。さまざまなマルシェ・イベントを運営・企画している。
目次
環境問題を意識したのは大学の講義|環境と食育に興味を持ち決断した休学留学
ーまず始めに自己紹介をお願いします。
愛知県岡崎市で家族とともに北欧の焼菓子店「コンディトリ」や北欧の珈琲店 「 オーテル」を運営している近藤楓です。大学時代は神戸に移り、新卒では岡山で暮らしました。現在は地元愛知県を拠点に生活しています。
私は、マルシェイベントの運営や企画も行っています。昨年から「できることから少しずつ、持続可能な暮らしかた」をコンセプトに、日々の暮らしからSDGsの実践を目指す「スコシズツマーケット」を始めました。取り組みの1つである「スコシズツ.プロジェクト」は、年2回岡崎市の公園で地元の仲間と一緒に開催しています。
ー楓さんはいつどのようにSDGsを知りましたか?
砂漠が広がっていることや異常気象が起こっていることなどの環境問題は、小中学校で習ったことを覚えています。
しかし、他人事で。遠い国の話だと思っていました。強く意識するようになったのは、神戸の外国語大学で国際関係学を勉強し始めた時です。英語を通して、世界の歴史や文化、社会課題を学んでいくと、SDGsの背景にある環境問題が議論の対象になっていることが多くありました。
ここで改めて環境問題やSDGsを含む国際的な取り組みを知り、少しずつ興味を持つようになりました。
ー大学の授業で環境問題を学ぶ中で、印象に残っていることはありますか?
世界では、国レベルで環境問題に取り組んでいる事実です。
とくにヨーロッパの国ではCO2削減目標を国全体の目標として掲げています。再生可能エネルギーを積極的に利用したり、石油製品やプラスチックを使わない商品を選んで買ったり、国民全体で取り組んでいる姿勢に日本との違いを感じました。
ー楓さんが、大学生の時に環境問題に取り組んだ出来事はありますか?
大学4年生の時に、1年間休学して、地球環境に配慮した有機農業を体験しながら学ぶ食育や環境について学びながら体験する留学に行きました。
ー留学のために休学した理由はありますか?
通っていた大学では休学する人が多く、自分も休学して「何かしたい!」と思ったからです。
私、ずっと海外で暮らしてみたかったんです。小さい頃に7か国語で話す親子サークルに参加していて。夏休みの期間に2週間程アメリカにホームステイ留学に行く企画があったものの、私の家族は金銭的に行けませんでした。
それなら自分で行けるようになろうと思って、大学を選ぶ時も留学できるところを基準に選びました。
休学中は、海外の大学に通う選択肢もありましたが、自分が勉強したいことを考えた時に「食」が出てきました。自分の中で食は食べるだけではなくて。食を勉強することで「どこから来たのか」や「何で来たのか」などの食の背景やつながりを知りたいと思ったんです。
そこで、有機農家さんのお宅を周る「ファームステイ」と「調理学校」を留学先に選びました。
「SDGsと食育」興味のきっかけは目の前の食べ物に対する想像力
ー楓さんが「食」に興味を持った理由はありますか?
目の前にある食べ物について、想像を膨らませるのが好きだからです。
例えば、自分の前に烏骨鶏の卵で作られたカステラがあるとしましょう。私は、すぐに頭の中に烏骨鶏が浮かぶんです。「烏骨鶏はどうやって育ったのかな」とか「走り回って育ったのかな」とか「烏骨鶏の他の名物は何があるのかな」とか、ひとつの物から考えを巡らせるのが楽しくて。
小さい頃から食べ物だけでなく、いろいろな物の由来や背景を想像してきました。しかし、「食」は私にとって一番身近でした。実家の食卓には、両親の趣味で輸入食品が多く並べられていたから、考えないとわからないものが多かったことも関係しているかもしれません。
たまたま大学時代に自分は「食」に興味があると気づいて、そこからのめりこみましたね。
ー休学して海外に行かれる前に日本で行動したことはありますか?
海外に行く前に農業やオーガニック(有機)を知っておきたいと思ったので、食に関するドキュメンタリー映画や本から知識を得ました。
ときに残酷な現実が映し出されたり、自分が知らなかった食の裏側を知ったりして。現在SDGsと言われているような社会の根本にある課題に向き合いましたね。
ー休学して海外に行かれた際の具体的なプランをお聞かせください。
母がイギリス好きだった影響で、昔からイギリス文化に憧れがあり、お菓子作りも趣味だったので、イギリスでお菓子作りを学ぼうと決めました。たまたまイギリス北部のスコットランドに3ヶ月の調理コースを見つけたので、現地の人と一緒にお菓子を焼くことにしました。
ビザの関係でイギリスには長くはいられなかったので、他の国も探してみて。アイルランドでファームステイができるプログラムがあったので、3ヵ所のファームを2週間ずつ周りながら、有機農業を学ぶことにしました。
その他にも、スイスやイタリア、フランス、オーストリア、チェコにも旅行したり、友達に会いに行ったりしました。
留学先で出会った人生をかけて形にしたいアイルランドの「オーガニックのある暮らし」
ーアイルランドで体験したオーガニックについて具体的にお聞かせください。
初めて訪れたファームは、アイルランドの北西に位置するコークという町でした。イギリスから移住してきた人が、ひとりで自然と共存する循環型農業「パーマカルチャー」を実践するガーデンを運営しているところでした。
ヤギから絞ったミルクを雨水で冷やして、チーズをつくって食べる。庭で育つ野菜は採ってきてサラダにする。にわとりやアヒルが産んだ卵はパンを浸して食べる。今までの生活では味わったことがない農的体験をしました。
農業自体初めての体験だったこともあり、ものすごいスピードで「パーマカルチャー」を吸収しました。そこから自分の中で自然と共に暮らすオーガニックやパーマカルチャーが当たり前の生活として根づきましたね。
次に訪れたファームは、9人の大家族でオーガニックファームを運営している場所で。牛や野菜を育てながら仕事としての「ファーム」を体験させてもらいました。
ー休学期間で学んだことを挙げると何が一番印象的ですか?
一言でまとめると、一生かけて形にしていきたい経験ができました。
また環境への取り組みで見ると、日本はかなり遅れていることを改めて実感しました。しかし、日本の遅れって歴史的な側面で見るとしょうがないことだと思っています。
戦争が起きて産業革命が早く進んだヨーロッパでは公害が問題視され、環境問題に取り組む時期も日本より10年程早かったのは事実です。しかし、このまま時が経っても日本は遅れていると言われ続けるだけでしょう。
私ができることはグローバルスタンダードを意識しながら、日本らしい「持続可能な暮らし方」を提示することだと思っています。
もともと日本には自然と共存しながら生きる暮らしがあり、昔からずっと受け継がれてきた知恵や工夫がたくさん残っています。だからこそ、海外の良い部分を参考にしながら、日本人として日本らしい持続可能な暮らしを求めた方が、無理がない。それに続けやすいと思うんですよね。
まずは私自身が、日本人にしか守れないものを守っていきたいと思っています。
ーありがとうございます。次回は、楓さんが行っている現在の活動や今後のビジョンについてお話しいただきます!
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