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【海外美術教員・個展・伝統漆工芸】画家・濱田恵理子さん〈インタビュー〉

こんにちは!ベトナムの寺内です。

今回みなさんにご紹介するのは、幼少期から海外の芸術に触れ、ベトナムで美術教員後にベトナム漆画を学び、現在は日本で画家活動をされている濱田恵理子さんです。

芸術に興味がある方や海外就職など、学生の皆さんの参考になるお話を聞いてきました!

濱田恵理子さん

1988年、宮崎県仙台市生まれ。多摩美術大学・美術学部・絵画学科・油画専攻卒業。

幼少期から高校卒業にかけて駐在員の父に帯同し、スペイン・イギリス・メキシコで過ごしたそうです。

2012年に多摩美術大学を卒業後、日本の児童館で指導員や、幼稚園の工作教室の先生という経験を経て、2013年にベトナム・ハノイの日本人学校へ美術教師として赴任。4年間の任期を終え、日本帰国後に結婚、2018年には夫の帯同で再びハノイへ渡越。教員時代に少し触れていたベトナムの伝統漆工芸「Son Mai(ベトナム漆画)」をHoan氏の元で本格的に勉強し始めました。

6年間にわたる2度のベトナム滞在を経て、現在は日本で育児をしながら制作活動を行なっています。

大学時代、講評中の濱田さん

──小学校から高校まで海外で過ごしたとのことですが、どちらにいましたか?

濱田さん 駐在員の父の帯同で、小学校から中学までをスペイン・バルセロナとイギリス・ロンドンで過ごしました。高校時代はメキシコ・メキシコシティのインターに通っていました。

──その頃から絵を描くことに興味を持たれたのですか?

濱田さん 小学校3年生の時に一緒にバルセロナの絵画教室に父と一緒に通い始めて、そこで父が油絵を始めたのをみて自分もやってみたくなったのがきっかけです。美術館を巡るのも好きでしたし、現地の日本人学校やインターでも美術の授業が一番楽しかったです。

──なぜ大学は日本を選んだのですか?

濱田さん 高校生の時にメキシコで過ごしていて、今後英語で美術の勉強をしていくのは難しいと感じ、日本の美大を受けることにしました。

ベトナム・ハノイで美術教員へ

濱田さんが漆で描いたハノイの建物

──海外での美術教員を目指すきっかけは何でしたか?

濱田さん 大学4年生の時のゼミで海外日本人学校のレポートを書いたのですが、その時にバルセロナ時代の図工の先生に会いに行き、先生が想いを持って授業を行ってくれていたことに感銘を受けました。

また、自分の経験から海外を転々としていく中でも、現地の文化を最も感じられるのが図工の授業で、私も当時の作品を捨てずにずっと持っていました。それがきっかけとなり、自分もその国の文化を感じることができる授業を作りたいと強く感じ、海外の日本人学校で図工・美術教員になりたいと思いました。

──海外で教員になるにはどうしたらいいですか?

濱田さん 方法は2パターンあります。

1つは日本で3年以上の教員実務経験をし、現職教員特別参加制度へ応募する方法です。もう1つはJOESが支援する教員雇用で、こちらは実務経験は問わず、海外の日本人学校による現地採用になります。

私は大学卒業後1年間日本で児童館職員や幼稚園の工作クラスの先生をして、JOESの教員雇用支援でベトナム・ハノイの日本人学校の美術教師として採用され、2013年から4年間過ごしました。

ベトナムの伝統漆工芸「Son Mai」と画家活動

2018年、ホアン先生のアトリエにてベトナム漆画を勉強中

──2018年に再度ハノイへ?

濱田さん 教員の任期を終え2017年に帰国後、ベトナム駐在中だった夫と入籍し、夫の帯同で2018年にハノイに渡越しました。

──ベトナムの伝統漆工芸「Son Mai」に興味を持ったきっかけは?

濱田さん ハノイで美術教員をしていた時に、日本人が運営する漆画ギャラリーの教室に通い始めたことがきっかけでした。そこで展示されていた日本人漆画家・安藤彩英子さんの作品に魅了され、私も漆絵に取り組んでみたいと思いました。

──ベトナム漆の魅力はなんですか?

濱田さん 「漆」とは樹の樹液なのですが、天然のベトナム漆は透明度が高いため、発色が良く顔料と合わせて様々な色を作ることができます。また、本来はごみとなって捨てられてしまう貝殻や卵の殻、おがくずなどを使うのも魅力の一つです。普段から、身近にあるものを工夫して使う、ベトナムの特徴が現れている様に感じます。

──2回目の渡越中にもベトナムの漆画を学ばれたのですか?

濱田さん はい。Hoan先生のアトリエに通いベトナム漆画を学ぶ傍ら、世界各地に広がるスケッチコミュニティーの「アーバンスケッチャーズ」に参加し、ベトナム人たちに交じり古い街並みを描き、ハノイのカフェで個展などをしていました。自費制作したハノイの街並みを描いたカレンダーやポストカードの販売も行いました。

──2019年日本帰国後から現在はどのように活動されていますか?

濱田さん 子供が生まれるまでは、日本でも個展を開いたりしていました。現在は日本の漆画も勉強しつつ、ベトナム漆画やこれまで学んだ技術を使ったり、自分でも研究を続け、今後も制作・発表していけたらと思います。

2020年、亀戸のカフェでの個展にて

やりたいことがわからない10代へー興味に一歩踏み込む

濱田さん 頭で考えるのも大切ですが、今やりたいこと・興味があることに一歩踏み込んでみることをお勧めします。違ったと思ったらすぐ方向転換すればいいし、好きだと思ったらどんどん進んでいけるのが10代の強みです。

“漆を学ぶ!”とか大きいことでなくても、例えば映画が好きだったら片っ端から好きな作品を観てみる。そうすると大学生など少し大人になった時、話が合う人が出てきて、そこから友人になったり、今後やりたいことが見えてきたりすると思います。やったことは無駄にはならないと私は信じています。

“自分を愛する”とは?

ハノイにて、アーバンスケッチャーズのメンバーとスケッチ中

濱田さん 大人になってもわからないですが…“自分を大切にする”ですかね。一人で自分と向き合える人もいると思いますが、私の場合は誰かにありのままの自分を好きと言ってもらえたり、肯定してくれもらえると、自分を大切に・自分を好きになれる気がします。自分じゃ気づけないことも、人が気づかせてくれたりします。

また“好きなことをする”のも、いろんな人に出会い、話をするきっかけになり、好きなものが同じ人と友達になれ、自分を愛するきっかけになると思います。「自分を大切にできる=人を大切にできる」のではないでしょうか。

2021年の日本の建物のカレンダーはペンと水彩で制作。

筆者のひとこと

私が濱田さんを知ったきっかけは、日本への一時帰国前に訪れたダナンのお土産屋さん「Hoa Ly」に置かれていたポストカードでした。可愛らしいタッチとカラフルな色で描かれたベトナムの建物に思わず購入しました。(こちらベトナム国内のみの販売なので、お土産にお勧め!)

今後は日本でベトナムの建物を元にした制作や発表に取り組んで行かれるとのことで、日本人だけでなく、日本に住むベトナムの方にも濱田さんの素敵な作品を見てほしいと思います!

2023年・漆絵制作中の濱田さん

濱田さんの作品や活動は下記からご覧ください。

濱田恵理子さんHP:Eriko Hamada

濱田恵理子さんInstagram @ericohama

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