「自分を愛するには、ダメな時も調子のいい時も自分を受け入れること」ベトナム・ハノイミックスバー【Barでこぼこ】店長・YUTOさん<インタビュー>
こんにちは!ベトナムの寺内です。
今回皆さんにご紹介するのはベトナム・ハノイでミックスバー「でこぼこ」の店長・YUTOさんです。「ミックスバー」とはLGBTQやSOGIなど、さまざまなセクシュアリティのスタッフが在籍しているバーのことで、お客様もセクシュアルマイノリティはもちろん、ストレートの男性や女性でも気軽に飲みに行けるお店として人気です。
YUTOさんがベトナムに来たきっかけは?大変だったことは?など、いまセクシュアルや将来で悩んでいる方だけでなく、皆さんにとって身近にいる人の話かもしれないと思って読んでいただけたらと思います。
目次
YUTOさん
1987年生まれ、横浜市出身。
18歳の頃にFtM(Female to Maleの略で心の性別が男性、身体の性別が女性として出生し、女性から男性へ性別移行を望む方を表す総称。心と身体の性別に違和感がある「トランスジェンダー」に属する)であると自認。
学生時代からプロダブルダッチプレイヤーをしながら、20歳の時に高田馬場でバーテンダーデビュー。3年間バーテンダーに従事した後、プロダブルダッチプレイヤーを引退。
歌舞伎町のミックスバーで働き始め、その後転々とし、歌舞伎町のミックスバーの系列店としてオープンしたおなべのショーパブで主任。3年後には神奈川県にある高級ラウンジのボーイ、同ラウンジと同じ会社が運営するガールズバーの店長に従事するも、刺激のない毎日から2年で卒業。その後神奈川県にあるおかまとおなべのショーパブで、この時の経験が今の原点に。
現在の店名の「でこぼこ」はこのお店の名前をいただいたそう。
自分のセクシュアルとカミングアウト
違和感を持っていた幼少期
──自分のセクシュアルに気づいたのはいつですか?
YUTOさん 幼稚園の時から、短冊に「男の子になりたい」と書いていたり、スカートを極端に嫌がる、車のおもちゃを欲しがる、など女の子と自分を認識していない節はありました。
しかし、当時「性同一性障害」という言葉は今のように認知されておらず、違和感をもったまま幼少期を過ごしました。
中学校で「性同一性障害」という言葉を知ったものの、“悪い事”のような気がしてしまい、自分できちんと自分のセクシャルを受け入れたのは18歳です。
YUTOさんのカミングアウト
──家族にカミングアウトはされていますか?
YUTOさん
23歳の時に両親にカミングアウトをしました。22歳からホルモン治療をしていたこともあり隠しきれず、渋々カミングアウトをしました。我が家は両親共に高齢で厳格な家庭だったので理解を得ることはできませんでした。13年かかって、現在は応援というかたちではないものの、認めてくれてはいます。
お互い現実から逃げた時期や、喧嘩した時期も多々ありますが、今考えると、親も葛藤の13年間だったと思います。
ベトナムへ来たきっかけ
──元々海外に興味があったのですか?
YUTOさん 小さい頃から海外旅行が大好きで、大人になってからも海外ボランティア(スポーツ指導)に参加したり、休みがある度に海外へ行っていました。言葉が通じず、日本での「当たり前」が、まったく通用しない環境に毎回刺激を受けていました。
──ベトナムへ来たきっかけは?
YUTOさん 日本での仕事で数多くのお客様とお話させていただいているうちに、自分の視野の狭さや慣れへの甘えに気付き、自分を厳しい環境におくべく「海外へ行きたい!」と思ったのがきっかけです。
──どのように就職先を見つけましたか?
YUTOさん 海外の就職サイトから現在の店舗のオーナーに連絡し、まずはベトナム視察へ。その後、現在の店舗で店長をすることが決まりました。
──ベトナムに来て大変だったことは何ですか?
YUTOさん 2021年の6月末にホーチミンに渡越したため、コロナの社会的隔離措置の真っ只中で、ホテル隔離・自宅隔離・都市隔離と4ヶ月間の隔離生活を経験したことが一番大変でした。
また日本では約10年間ホルモン治療をしていたのですが、ベトナムではホルモン療法をしているFtMがいないようで情報がまったく入らず、約6ヶ月治療ができませんでした。その間に生理がきたり、体型が女性化したり、情緒不安定になったりして大変でした。
──その後治療は受けられたのですか?
YUTOさん 何とかホルモン注射を打ったのですが、日本のような少量のものは存在せず、かなり多い量を1回で接種しました。打った直後は動けず、辛かったです。
──今後海外で生活をしたいFtMの方へのアドバイスは?
YUTOさん FtMだからと言って特別なことは特にないと思います。初めての海外生活はそれなりにみんな苦労します。自分らしく堂々と生活していれば何も問題ないかと思います。
ただ、病院系に関しては説明などで言葉の壁もあるため英語の診断書は必ず日本で取得してくることをお勧めします。実際何度説明しても、正式書類の性別が違ったり、健康診断で看護師側が混乱してしまったことはあります。書類が発行されたらきちんとチェックすること、不安なら通訳をつけることなどで対応は可能なので、自分に合ったやり方を探せば問題ないです。
やりたいことがわからない10代へ
YUTOさん 「これがやりたい!」って思って何かを始める人って実際少ないんじゃないかな?って思います。僕自身、仕事に関しては、なんとなくやってみようかな?くらいの感覚で始めたものが気づいたらやりたいことに変わっていた人間です。
やりたいことがわからないって普通の事だと思うので、焦らず、失敗してもいいから「やってみる」が大事だと思います。方向が違くても、足を止めなければ必ずゆっくりでも成長していると僕は信じています。
“自分を愛すること”とは?
YUTOさん 自分にOKをだしてあげること。ダメな自分も調子のいい自分も全て自分だし、それを「自分」として受け入れることなのかな。そうすると人のことも受け入れることが出来るし、ちょっとのことでは自分自身がブレなくなる。自己肯定感につながるし、より自分を愛せる。って思っています。
まとめ
貴重なお話を聞かせてくださったYUTOさん、ありがとうございます!YUTOさんは現在、LGBTQをメインとしたショーパブをオープンを目標に、LGBTQのスタッフが自分らしく働ける・お客様も国籍や性別、年齢問わず気軽に遊びに来れるようなお店作りに励まれています。
いま20代の方はハノイ旅行の際、ぜひ「Bar でこぼこ」を訪れてみてはいかがでしょうか?
※10代の皆さんはお酒は20歳になってから楽しみましょう!
■Bar でこぼこ 住所:438 Đội Cấn, Cống Vị, Ba Đình, Hà Nội 電話:+84 373 246 782 営業時間:20:00~25:00 定休日:日曜 Facebook:https://www.facebook.com/dekoboko.vietnam
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