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奨学金が気になる!FPが貸与型奨学金を勧める理由

日本の大学の教育費用は、ヨーロッパなど諸国と比較しても高額です。授業料や教科書代、通学費などの平均費用は、国公立大学に4年間自宅から通学した場合約370万円、私立大学(文系)は約520万円、私立大学(理系)は約650万円にもなります。遠隔地の大学に通う場合には下宿代などさらに平均で約360万円かかります。私立大学(理系)では1,000万円を超えることになります。決して安くはないこの金額を支払うために必要なのが奨学金です。

今回は10代のみなさんにぜひ知ってほしい奨学金のあれこれについて、ファイナンシャルプランナー(1級FP技能士・CFP資格者)の塚本伸明さんにインタビューしてきました!

一般財団法人 地域社会ライフプラン協会特別講師 塚本伸明さん

ここで、「FPってなに?」「CFPって?」と思った方は多いかもしれません。ひと言で言うと、”お金の専門家”です。日本FP協会は、FPは人それぞれの夢の実現をお手伝いする「家計のホームドクター®」であると定義しています。そして、CFPは一般的なFP資格のAFPよりもさらに専門性が高い資格になります。FPに関する話はこの辺にして、詳しいことが気になる方はこちらをのぞいてみてくださいね。

奨学金の利用率は?

大学生の奨学金の利用率は47.5%平成30年度、日本学生支援機構、平成30年度学生生活調査報告、平成30年度学生生活調査報告、集計表 大学・短期大学)にとどまっています。これは貸与型、給付型に関わらず、なんらかの奨学金を利用している学生の割合であり、まだまだ低いのが現状です。

教育ローン・給付型・貸与型の比較

貸与型奨学金と似た制度に教育ローンがあります。民間の銀行や日本政策金融公庫などが提供している制度で、教育資金を金融機関から借り、分割して返済する制度です。こちらは保護者が借りる主体となります。

給付型奨学金はその名の通り返済不要の奨学金です。

貸与型奨学金は学生本人が卒業後に返す必要がありますが、無利子のものと有利子のものがあります。いずれも学生の成績、家庭の収入の基準、返済時の金利に違いがあります。それらをまとめた表がこちらです。

上限額学生の成績基準家庭の年収基準返済時の金利
教育ローン (注1) 350万円なし上限890万円年1.66%
給付型奨学金 (注3) 214万円 (注4) 高校の評定平均値が5段階評価で3.5以上(注5)上限303万円(注6)返済なし
貸与型奨学金|無利子 (注3) 307万円 (注7) 高校の評定平均値が5段階評価で3.5以上(注5) 上限747万円(注2)無利子
貸与型奨学金|利子あり (注3) 576万円 (注8) 高校における学業成績が平均水準以上 (注5) 上限1100万円(注2)年0.268%(注9)

注1…教育ローンは日本政策金融公庫 (令和3年9月30日現在) を参考。もっとも一般的な例を掲載しています。(以下同)
注2…保護者2名、子ども2人の場合
注3…日本学生支援機構を参考。
注4…月額44,500円を毎月、4年間受け取り続けた場合を試算。家庭の収入基準の3区分のうち第2区分で、私立大学に自宅外通学の学生の場合を想定。
注5…成績基準は進学前に申請する場合。
注6…家庭の収入基準の3区分のうち第2区分で、片方の親が無収入である場合。
注7…月額64,000円を毎月、4年間受け取り続けた場合を試算。私立大学に自宅外通学の学生の場合を想定。月額は20,000、30,000、40,000、50,000、64,000円から選択可能。
注8…月額120,000円を毎月、4年間受け取り続けた場合を試算。月額は20,000-120,000円から10,000円刻みで選択可能。
注9…令和2年3月に貸与終了し、基本月額に対して利率固定様式で計算した場合。

さらに、注目するべきポイントについて解説していきます。

①金利の違い

教育ローンに比べ、貸与型の奨学金の利率は非常に低く設定されています。借りる主体が親か学生本人かというだけで、金利に大きな違いが生まれます。

②受給の難易度の違い

貸与型(有利子)の奨学金に比較し、給付型や貸与型(無利子)の奨学金では、家族の収入基準が低く、本人の成績基準が高く、設定されています。また、上記基準に合致しても、必ず適用を受けられるとは限りません。

募集文の「金利最大3%」のからくり

ところが、日本学生支援機構の「2020年度 返還の手引き」を見ると

「※いずれの方式も利率は年 3%が上限です」

という文言が見つかります。年利3%は高利率なのでは?と思ったそこのあなた!ご安心ください。ここに込められた意味を塚本さんはこう解説します。

それは上限が書いてあるにすぎません。奨学金は、学校を卒業して返済を始めるときに金利が決まるんですよ。普通は金利は借りるときに決まるのに対し、奨学金は例外で返すときに決まるので、借りる段階では最高でも3%ですよ、と示しているのです。」

日本学生支援機構の奨学金を見ると、上限金利が3%に設定されていますが、実際の適用金利は利率固定方式で、直近5年間は0.1~0.3%で推移しています。

ちなみに利率見直し方式では、年利は利率固定方式より低い0.004%になっています。(基本月額部分、令和3年度3月に貸与終了)ただし、利率見直し方式では、金利が変動するので、返済期間中に金利が上がる可能性があります。その点はご留意下さい。利率固定方式のほうが将来の返済額の予定が立ち、安心かもしれません。

適用対象であれば、奨学金を活用する

以上のことから、塚本さんはこう言います。

「進学にあたり、奨学金の活用を是非検討してください。マスコミ報道では、奨学金の返済が生活を圧迫してとても苦しいとか、失業して奨学金の返済ができないとか、マイナス面ばかりがクローズアップされますが、圧倒的多数の人は、奨学金のおかげで低い金利で就学資金を借りることができてよかった、というのが本当の話なんです。教育ローンなどほかの手段と比べて金利がとても低いので、適用対象の方であればぜひ活用を検討していただきたいと思います。」

「また、高額所得者や共働き世帯など世帯収入が1,100万円(4人世帯、自宅通学の目安)を超える場合などは、奨学金の適用対象外となりますが、一般的な会社員や公務員の場合には、奨学金の対象となるケースが多いでしょう。」

確かに、返済が必要な貸与型奨学金はいいイメージであふれているとは言えないのが現状です。しかし、どうしても悪い話のほうが目立ちやすく、円滑に奨学金を返済できた話は取り上げられにくくなってしまっているというのが実情でしょう。

また、経済的に平均的な家庭でも奨学金を借りられるというのは意外な事実ではないでしょうか。

大学院でこそ奨学金を生かす

「見落としてはいけないのが、大学院の奨学金です。大学の奨学金とは異なり、収入基準は、親を含む世帯収入ではなく、大学院生本人(含むその配偶者)の所得が審査基準になるという点です。」

塚本さんはこう指摘します。

大学院生はほぼ100%奨学金の適用対象となるのではないでしょうか。将来、親にあまり負担をかけずに大学院に行きたい、という場合には奨学金を活用すれば良いと思います。」

「また、大学や学科にもよりますが、企業や基金、大学の交友会などによる給付型奨学金制度もあると思います。その類の奨学金は成績優秀が条件になることもあり、”狭き門”ですが・・・。」

将来大学院に進みたいという人は、ぜひ奨学金を頭の片隅にとどめておいてください。

「借りる」という認識は必要

貸与型奨学金は金利0もしくは低金利ですが、あくまで「就学のための借金」です。「お金を借りる」という意識は忘れてはいけません。借金を踏み倒すのは問題ですよね。返済が苦しい場合には、返済を猶予する制度等もあります。

ここで具体例をあげて、月額8万円を4年間、総額384万円を借りた場合を見てみましょう。

日本学生支援機構の奨学金貸与・返還シミュレーションによると、 利率固定方式で全返還期間で金利が0.268%だった場合、 毎月の返還額は1万6458円です。ひと月に8万円を借りているため、返済回数は240回(20年)となり、大学卒業後に返済を始めたとすると、43歳になるまで奨学金を返済することになります。返すお金の総額は395万円になり、トータルで11万円の差です。

また、第二種奨学金の返済回数は、ひと月に3万円を借りていたら156回(13年)、5万円を借りていたら180回(15年)とその金額ごとに決まっています。詳しくは大学・返還例 | JASSOのサイトをご覧ください。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査結果によると、大学卒の平均初任給は21万200円です。決して返せない金額ではない奨学金。卒業後仕事について順当に働いていれば返せる金額といえるでしょう。

まとめ

世界には大学までの教育費が無償のところがある一方、日本の大学教育はお金がかかります。そんな教育費を助けてくれるありがたい制度が奨学金であることがわかりました。借金だからと距離を置かず、まずは調べてみることが大切です。

10代のみなさんにとって、大学をはじめ理想の進路を実現するために、奨学金がより身近な選択肢となれば幸いです。

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