【電動キックボード】事故事例等から学ぶ、安全に利用するポイント
一定の要件に該当する電動キックボード等は、運転免許不要で公道を運転できるようになりましたが、
交通事故が増える、危険だ、便利で快適、など様々な意見が飛び交っていますね。皆さんはどう思いますか?
今回は、電動キックボード等の事故や取締り状況などから、安全に利用するためのポイントを探ってみました。
目次
電動キックボード等のルールをおさらい
16 歳以上の人が運転免許なしで運転できる電動キックボード等は
- 特定小型原動機付自転車(以下「特定原付」と表記。)の基準に適合していること。
※適合製品には「性能等確認済シール」又は「型式認定番号標」が貼付されている。 - ナンバーを取得すること(市町村への届出)。
- 強制保険(自賠責保険等)に加入すること。
などの要件を満たす必要があります。
性能等確認済シール(又は型式認定番号標)が貼付されていないものは、電動機の出力などによって、
原付免許や自動二輪免許等が必要です。間違うと無免許運転になる場合があるので要注意です。
改正法施行後の電動キックボード等の事故及び取締り件数
警察庁の発表によると、改正道路交通法の施行後(2023年7月中)の電動キックボード等による人身事故は、8件(東京都 6 件、大阪府 1 件)。その内訳は
- 単独:4件
- 歩行者に衝突してけがをさせた:2 件
- 四輪との衝突: 1 件
また、交通違反の検挙は 406 件。その内容は、
- 信号無視 187 件
- 緑ランプを点滅させずに歩道を走るなどした通行区分違反 151 件、
- 一時不停止 35 件
- 歩行者妨害 17 件
- 酒気帯び運転は 2 件ほか
とのことでした。
※いずれも特定原付以外の電動キックボードも含む。
電動キックボード等の交通事故
1.改正法施行後の交通事故
令和 5 年 7月以降に発生した電動キックボード等の交通事故には、次のようなものがありました(※報道等から)。
☆ 電動キックボードの男性が歩道上で、幼児(男児)と接触、幼児が胸部打撲等の負傷
車道を電動キックボードで走行していた男性が、進路前方に駐車中の車両を避けるため歩道に乗り入れたところ、歩道を歩行中の幼児(男児)と接触。
※事故時の電動キックボードは新基準(特例特定原付)に適合しない(最高速度 6km/h 以上)歩道走行
不可のもの。
☆ 電動キックボードがトラックと衝突
電動キックボードを運転中の男性が一時停止標識のある交差点に進入。交差道路を進行してきたトラックと衝突する事故(けが人はなし)。男性から基準値を超えるアルコールを検出。
☆ 大学生による飲酒運転事故
男子大学生が飲酒後、深夜に電動キックボードを運転中、停車中のタクシーに追突する事故(けが人は
なし)。電動キックボードは新基準(特定原付)に該当しないもの。大学生は運転免許なし。
☆ 段差や運転操作ミスによる転倒事故
電動キックボードを運転していたとみられる男性が堤防道路で転倒しているのが発見された単独転倒事故。男性が運転していたと推察される電動キックボードは新基準適用外のもの(運転免許が必要)。
そのほか、
①電動キックボードを運転中に歩道に入る際に、歩道と車道との段差でバランスを崩して転倒
②曲がり角やカーブでブレーキ操作等が不適切であったために転倒する事故などが発生。
☆ 歩道を走行中に歩行者と接触
電動キックボードを運転し歩道を走行中に歩行者と接触、転倒した歩行者が骨折。そのまま現場から逃走しようとしたひき逃げ事故。
2.改正法施行前の交通事故
歩行者との事故
- 電動キックボード等で歩道を走行中に歩行者と衝突
- 見通しの悪い狭隘な道路から広幅員の道路に出る際に歩道を通行中の歩行者と衝突
- 車道を通行中、横断歩道を横断中の歩行者と衝突
など。
自動車との事故
- 走行中にふらついて後続の車両と接触
- 急な進路変更やすり抜け運転中に接触
- 一時不停止、信号無視などにより交差道路を進行してきた車と衝突
- 信号待ちした車両等への追突
など。
単独・転倒事故
- 車道走行中にわだちや段差などにハンドルとられて転倒
- 道路と歩道の堺にある縁石に接触し転倒
- 発進時または低速走行時にバランスを崩して転倒
- 他車との接触を避けようとしてバランスを崩して転倒
- ブレーキやハンドル操作ミスによる転倒
など。
飲酒運転事故
- 飲酒運転中に駐車車両や停止した車両に衝突
- 飲酒運転中にふらつき道路左端の縁石に接触して転倒
など。
その他
ひき逃げ事故や当て逃げ事故などが発生している。
参考に、警察庁が発表した電動キックボードに関する交通事故の状況(令和2年~令和5年1月)を示します。四輪車との事故や単独事故が多いですね。
3.交通事故を防止するためのポイント
改正後の事故では、無免許運転や飲酒運転などが目立ちますね。
新しい制度では、電動キックボード等は電動機の出力により「特定原付」、「一般原付」、「自動二輪」などに区分されていますが、運転免許なしで運転できる「特定原付」の要件は
- 「特定原付」の基準に適合した電動キックボード等であり、適合していないものは運転免許が必要。
- 「特定原付」として使用できる電動キックボード等には「性能等確認シール」等が貼付されている。
- 通行可能な歩道を走行する際は、一旦停止して「歩道走行モード」に切替える。
ことなどが必要であること。
いずれの区分であっても電動キックボード等は車両であり飲酒運転は禁止などの基本的なことを理解せずに運転していると推察されます。
また、これまでの事故の発生状況から特に、
- 「特例特定原付」として歩道を走行する際は歩行者優先、歩行者に対する安全確認や歩行者の動きを注視する。
- 道路の形状や進路の安全を確認し速度を調整して走行する。
- 一時停止標識のある場所や見通しの悪い場所では一旦停止して安全を確認する。
- ながらスマホ運転や脇見運転などをしない。
など、電動キックボード等に関する交通ルールを遵守することが必要です。
電動キックボード等はなぜ危険なの?
危険だといわれている電動キックボードですが、「特定原付」と「一般原付」に該当する電動キックボードを運転してみたところ、次のような点を感じました。
○タイヤが小さい・・・最大の特徴であり弱点である。
自転車やバイクに比べてタイヤが極めて小さく、道路の段差やくぼみ・小石などでハンドルをとられやすく転倒しやすい。
○重心が高く不安定
重心が高く、かつ前後二輪のためで不安定でバランスがとりにくい。
○急な操作はバランスを崩しやすい。
急なハンドルや急ブレーキでバランスを崩しやすく、体が投げ出される可能性がある。
○防護手段がない
自転車などと同じで運転者の身体をガードする装備がない。
○天候や路面状況の影響を受けやすい
雨、雪、横風などの影響を受けやすく、特に濡れた路面などで滑りやすい。
また、道路は中心部から左右端(路肩)に向けて若干傾斜しておりその影響を受ける場合があるなど。
特性を理解した運転で事故リスクを低減
最近では三輪の製品もありますが、使用する電動キックボードの特性、特にブレーキやハンドル性能、重心、電動機の出力などを理解した乗り方をすることが重要です。
運転する場合には
- ハンドルをしっかり握る。
- 速度調整を適切に行う。
- 急ハンドル、急ブレーキなど「急」のつく操作を避ける。
- 周囲の安全を確認しながら走行し、危険を早期に察知して余裕のある運転操作を行う。
- できるだけ歩道走行を控える。歩道走行時は歩行者優先を守る。
- マンホール蓋や側溝、わだちなどを避け、平坦な路面を走行する。
- ヘルメット着用して頭部を保護するほか、長袖の着用、膝などのプロテクター等を使用する。
- 対物事故や単独転倒事故にも対応できるよう任意保険にも加入する。
などに留意して事故のリスクを少しでも低減するようにしましょう。
また、運転に慣れてくると、つい格好良くスイスイと走りたくなりますが、慣れから来る油断や操作の緩慢、注意力を欠いた運転などが交通事故を誘発しますので慎重に!
しつこいようですが・・・基準適合品を使用しよう!
運転免許なしで運転できる特定原付に該当する電動キックボード等には、基準に適合していることを示す「性能等確認済シール」又は「型式認定番号標」が貼付されています。
貼付されていないものは原付などの「運転免許が必要」と考えてください。
電動キックボード等を持っている人は、「性能等確認済シール」などが貼付されているか?貼付されていなければどの区分に該当するのか?運転免許が必要ないのか?を確認してから使用しましょう。
これから購入する人やレンタルする場合も同様です。
Webや通販などで電動キックボード等が安価に販売されているものの中には、新基準に適合せず運転免許が必要なものも多いです。
なぜか、「車道は時速20キロ以下、歩道は6キロ以下で走行すれば免許不要」というように誤った認識を持っている人がいるようです。
免許不要で運転できるのは「特定原付」の区分に該当する性能であることを国土交通省が確認した電動キックボード等です。
間違わないようにしましょう。
おわりに
衝突時の衝撃力は速度と重量が増すほど大きくなり、また、制動距離やカーブを曲がるときの遠心力は速度の2乗に比例して大きくなります。
特定原付に該当する電動キックボード等はもちろんですが、一般原付などに該当する出力の大きい電動キックボード等は走行速度も速く一層衝撃力等が大きくなり危険度が増しますので要注意ですね。
また、電動キックボード等で違反をすると検挙され罰則が科せられることも認識しておきましょう。
交通ルールを学び・遵守するとともに、車両の特性に応じた安全な運転をしましょう。
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