【特別支援学級】障害を持つ学生のための学生総合保障制度とは?重田誠氏インタビュー(前編)
まだまだ肌寒い日が続くも、時折ふっと訪れる春の陽気がなんとも嬉しい早春入りたての今日この頃。10代の皆さんはこれから卒業式を迎え、新しい生活の始まりに胸を躍らせている頃でしょうか。
さて、以前NEONAVIではリニューアルした学生総合保障制度を紹介しました。
幼稚園から大学生までの方を対象にした学生総合保障制度ですが、この度、特別支援学級向けのプランが発売されることになりました!特別支援学級に通うお子さんがいらっしゃるご家庭には、ぜひ知ってほしい内容になっています。
そこで、特別支援学級向けの学生総合保障制度を立ち上げた重田誠さん(株式会社グリット 代表取締役、一般社団法人 全国地域生活支援機構『JLSA』事務局長)にお話を伺ってきました。
簡単に経歴を紹介すると、重田さんは卒業後に新卒でAIG損保に入社。営業として活躍後、東北営業本部で営業課長を担当。その後障害者向けの保険を専門に扱っていた代理店に移籍し、障害者向けの保険プランが整備されていないという現実に直面。そんな経験が今回の特別支援学級向けの学生総合保障制度の樹立に繋がったそうです。
「特別支援学級向けの学生保険ってどんな内容?」「適応基準は?」。そんな疑問をお持ちの皆さんはこのインタビューを読めば理解が深まること間違いなしです。
目次
特別支援学級向けの学生保険設立の経緯
─NEONAVI編集部(以下、略)まずは簡単に、『特別支援学級向け学生総合保障制度(学生あんしんパスポート)』の概要をお伺いしてもよろしいでしょうか。
重田様(以下、略):はい。まずは簡単な経緯からご説明させていただければと思います。
私は以前大手の保険代理店で勤めていたのですが、メインのマーケットの一つに特別支援学校がありました。障害者の方のための学校ですね。そこのPTA連合会(全国特別支援学校知的障害教育校PTA連合会)向けに保険をご案内しておりまして、大体6万人くらいのお客様に加入していただいていました。
ところが、特別支援「学校」向けにご案内していたにもかかわらず、特別支援「学級」の事情はよく分かっていなかったんです。漠然とは知っていたのですが、その実態についてはよく分かっていなかったんですね。
─確かに、私たちも「そんなクラスがあったな」という程度の認識ですね。
詳しく調べてみると昨今、特別支援学級の生徒数が著しく増えてきているということが判明しました。5年前と比べるとおおよそ倍の数です。
これはノーマライゼーションの考え方が影響していると考えています。以前は障害を持っていることをどこか隠すような空気がありました。しかし現在では、「周囲の人の理解・サポートを受け、障害者手帳をとってきちんとした福祉・サービスを受けましょう」という考えが浸透してきた結果だと思われます。
基本的に学校向けの保険の契約は、まず各学校にパンフレットを配り、保護者会でご案内をするところから始まります。契約は各都道府県別に組織されているPTA連合会が団体契約者となり、加入はご任意となります。
いわゆる通常学級の生徒さん同様、特別支援学級の生徒さんもこうした保険に加入していることが多いです。しかし、通常学級の生徒さんを前提にして組まれたプランですと、障害の特性上発生するような事故に対応しきれていないという実態があるわけですね。
先ほど申し上げたような、年々特別支援学級に進学するお子様が増えてきているという状況を鑑みても、やはりこういった方々を守ってあげるような保険が必要なのではないかと考えました。
一般的な保険では補償できない事例
─なるほど。具体的にはどういった事故やトラブルが想定されるのでしょうか?
パニックを起こしてガラスを割ってしまったり、ものを投げつけたり、よく耳にするものですと先生のメガネを割ってしまう、というケースもあります。実際に学校の先生や福祉関係の方々からは、「メガネを壊した場合は補償の対象になりますか」と訊ねられることも多いです。
実際に遭遇した例ですと、障害者の生徒さんがピアノを壊してしまったという事例がありました。学校のピアノは非常に高価なものですから、損害額は70万円ほどです。
─70万円…。とても自費で払える額ではないですよね。
その生徒さんは保険に加入していましたから、当然学校側もその想定で親御さんに請求をしますよね。すると、保険会社は「補償が効きません」というわけです。障害の特性によって起こった事故は対象外だったからですね。
こうしたケースをよく耳にするようになり、一般的なものではカバーしきれない事例にも対応できる保険をご案内できないだろうか、と思ったわけです。
─なるほど従来のプランでは不足しているところを埋めようということですね。
あとはもう一つ大きなきっかけがありまして。
全国の自治体が加入を義務付けている保険の一つに自転車保険があります。埼玉県もその例に漏れません。実際に埼玉県のHPをご覧いただくと、対象となる保険の一覧リストが掲載されているのですが、ある日、それを見た埼玉県在住の方が県庁に電話しました。
「うちの子供がパニックを起こして自転車に乗って事故を起こしたら、ここに紹介されている保険で補償できるのでしょうか?」と。この方は精神障害を持ったお子様がいるお母様だったんですね。
県庁は真摯に回答すべく、一覧リストに載っている保険会社に確認したところ、結果は、あくまでもケースバイケイースを前提に「補償できない」、「補償できない可能性が高い」という回答であったそうです。
ところが損保ジャパンは、そんなケースにもご対応可能なプランをご案内できるということで、私が担当している「わたしのお守り総合補償制度」(*注)を紹介していただきました。県庁の方に直接お話をさせていただいて、現在では埼玉県のHPに「わたしのお守り総合補償制度」のバナーが貼られています。
(*注)わたしのお守り総合補償制度は、重田氏が代表を務める株式会社グリットが販売する障害者向け保険です。
<概要>
○一般社団法人全国地域生活支援機構【JLSA】の個人会員向け
商品名:わたしのお守り総合補償制度
契約者:全国地域生活支援機構【JLSA】
対象者:障害者・認知症高齢者など
【編集部補足】
重田氏は、精神疾患のある障害者や認知症高齢者向けの保険を全国地域生活支援機構【JLSA】を団体契約者として展開しています。その補償を特別支援学級の児童・生徒に展開するために、全国学生保障援助会を団体契約とした学生あんしんパスポートに補償を組み込んで、販売することになったという経緯があります。
学外でのトラブルにも対応
─小中学生は自転車に乗る機会も多いですから、それはありがたいですね。
自転車事故はなかなか難しいんです。今や自転車は法律上軽車両ですから、道路交通法に基づき、責任割合を車に準じて決定しなければなりません。すると、それを知らない子供たちが自転車に乗っていて事故に巻き込まれたときに、被害者だと思っていても「実は100パーセント加害者だった」というケースが往々にしてある。
こうした複雑な部分を整理してくれるのが保険ですよね。だからこそ保険に加入した方がいいわけです。にもかかわらず、障害者が不安定な精神状態で自転車に乗って事故を起こしたり、巻き込まれたりした場合に適切な保険がない。そんなのはまずいだろうという危機感が今回のプラン考案に繋がりました。
加えて今回見直した点の一つに、通学時のトラブルについての補償があります。
自宅にいる時は親御さんが、学校には先生がいらっしゃいますが、登校・下校時には一人のことが多いですよね。ではその際に巻き込まれたトラブルに関してはどうするのかという課題に直面しました。
こうしたことを受けて、今回、特別支援学級向けのプランには、弁護士費用補償をオプションで付けられるようにしました。万が一事故やトラブルに遭った際、弁護士の紹介や、解決のための費用をお支払いするというものです。
総括すると、今まで学校向けに提供されていた保険ではカバーできていなかった部分を見直し、障害者の方にも最大限配慮し、設計し直したものが今回の「特別支援学級向け 学生あんしんパスポート(学生総合保障制度)」ということになりますね。
───次回に続く
重田誠さん
株式会社グリット 代表取締役
一般社団法人 全国地域生活支援機構『JLSA』事務局長
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【取扱い代理店】
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〒331-0821 埼玉県さいたま市北区別所町33-1
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損害保険ジャパン株式会社
承認番号:SJ21-17333
作成日:2022/03/29
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