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恋愛に悩む女子、エリック・ロメール「喜劇と格言劇」を観て【アマプラ配信中】

エリック・ロメール「喜劇と格言劇」

ヌーヴェル・ヴァーグのトリとも言われるエリック・ロメール(1920~2010)。これまでサブスクであまり配信されてきませんでしたが、2021年6月現在、Amazon Primeで9作品が配信中です。その中で紹介するのは、「喜劇と格言劇 / Comédies et Proverbes」。Proverbesは箴言と訳されることもあります。1981年から1987年にかけて製作されたシリーズ、計6作品。

  • 飛行士の妻(1981)
  • 美しき結婚(1982)
  • 海辺のポーリーヌ(1983)
  • 満月の夜(1984)
  • 緑の光線(1986)
  • 友だちの恋人(1987)

恋愛に悩む女子に観てほしい理由

©1984 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R.

ロメールの作品を観たことがある高校生は、すでに映画通であることが多いと思います。特別映画が好きでない人は、なかなかフランス映画を観る気になれないのではないでしょうか?私は、ロメール作品がフランス映画であるという理由で、大衆的に観られないことは本当にもったいないと思ってこの記事を書きました。

「喜劇と格言劇」は、恋愛に悩んだり、もやもやしている女子のためにあるようなシリーズ。主人公は15歳~25歳くらい(?)で、よくあるような恋愛映画の胸キュン的なものではなく、「なんかこんな人いるわ」的な恋愛をしています。

たとえば、5作目『緑の光線』では、「愛されたいけど軽い気持ちは嫌!」というもどかしくてちょっとかわいそうな主人公のひと夏がとても丁寧に描かれています。別に主人公が魅力的なわけではないこと(むしろ愚か)、傍観者にしかわからない地味なすれちがいや、それぞれが恋愛についてお喋りする会話、誰かの日常をのぞき見しているような映画たちです。

文化も年代も違うのに「友達にこういう人いる」、「クラスにこういう人いる」、「私はこうじゃないけど、なんかわかるかも」と思える。”こういう人”の愚かさも愛おしいのだから、私もこれでいいんだ、と笑い飛ばせる。それがロメールの「喜劇」の力ではないでしょうか。

飛行士の妻(1981年)

©1981 LES FILMS DU LOSANGE.

「喜劇と格言劇」の第1作。6作品の中で唯一男性が主人公ですが、恋人の女性のことに悩み、たまたま出会った女性と会話しているのでほぼ女性が主役。すれちがいがテーマのような作品です。

恋人が元恋人といるところを見かけたときのモヤモヤした気持ちが、この映画の全ての原動力になっているところが面白い。

  • 原題    La Femme de l'aviateur
  • 監督・脚本 エリック・ロメール
  • 製作年   1980年

美しき結婚(1982年)

©1982 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R.

『美しき結婚』は主人公サビーヌの理想。友人のクラリスのように玉の輿に乗って、悠々自適な生活を送ることを夢見ています。でも現実は妻帯者と浮気しているだけ。そんな彼女は自分に嫌気が差して、一度デートをした年上の弁護士との結婚を決意します。相手の気持ちかまわず、結婚を「決意」するところがなんともおかしくて笑ってしまうけど、そんなに強い意志で行動できるならきっと大丈夫とも思えちゃう。周りに迷惑をかけて、ちゃんと幸せをつかむタイプの女子。

  • 原題    Le Beau Mariage
  • 監督・脚本 エリック・ロメール
  • 製作年   1982年

海辺のポーリーヌ(1983年)

©1983 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R.

ロメールの代名詞、避暑地での少女の夏の思い出。まだ恋をしらない15歳のポーリーヌは、いとこのマリオンに連れられてバカンスを過ごします。それぞれの恋愛の軽薄さが面白く、これだから夏は!な作品。ベルリン国際映画祭の監督賞と国際評論家連盟賞を受賞しました。

  • 原題    PAULINE À LA PLAGE
  • 監督・脚本 エリック・ロメール
  • 製作年   1983年

満月の夜(1984年)

©1984 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R.

夜が似合いすぎるパスカル・オジェ演じるルイーズ。自由気ままに縛られることを嫌う恋多きルイーズと、堅実で地味なレミ。めちゃくちゃ相性悪そうなのになんで一緒に住んでるの?

  • 原題    Les Nuits de la pleine lune
  • 監督・脚本 エリック・ロメール
  • 製作年   1984年

緑の光線(1986年)

©1985 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R.

バカンスは充実させないと、という同調圧力のような文化に追い詰められるデルフィーヌ。夏休みはたくさん遊ばないと、って誰かに言われたわけでもないのに予定で埋め尽くしてしまう私たちが共感するところあるのではないでしょうか。孤独はいやだけど、そばにいてくれるのは誰でもいいわけではないのがめんどくさい。ただ、そのめんどくささってしょうがないんですよね。なんか充実してない、とモヤっているなら観てほしい作品。ラストの解放がとても美しい。ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞と国際評論家賞を受賞しています。

  • 原題    LE RAYON VERT
  • 監督・脚本 エリック・ロメール
  • 製作年   1984年

友だちの恋人(1987年)

©1986 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R.

ひと夏の四角関係を描いた作品。色彩が面白い。外交的で素直なレア、自分に自信がなく臆病になってしまうブランシュ。友達同士って性格が似ていないから仲がいい。ここでも「ズレ」がうまいこと使われています。

  • 原題    L'AMI DE MON AMIE
  • 監督・脚本 エリック・ロメール
  • 製作年   1986年

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